毎年3月になれば「就職活動」が解禁され、街中を黒一色のスーツを着込んで歩いている姿を目の当たりにします。
そして多くの学生が大学を卒業して、内定先の企業に入社して社会人として新たな一歩をふむわけですが、中には「就活をやりたくない」と感じている学生もいらっしゃいます。
「なぜやりたくない」という気持ちになるのか。
この記事ではその理由について解説していきます。そして「就活以外にも進路がある」こと、つまり多様化の時代であることをご紹介します。
1.「就活をしたくない」と思う学生が増えている
1-1.「やりたくない」という気持ちにさせる理由
学生にとって「就活」というものは、「毎年3月になったらしなくちゃいけない1つの通過儀礼」という考えが刷り込まれています。これは周りの同期が「就活」に向けて動き出していることから来る「焦燥」や「自分もやらなくては」という「同調」が原因です。しかし、本音をさらけ出すと「就活はやりたくない」という気持ちは、少なくとも「就活に取り組む」誰もが持ちます。
ではなぜ「やりたくないという気持ち」が生まれるのでしょうか。以下はその理由です。
- 仕事に対するネガティブなイメージが強い
すでに社会人として巣立っている先輩や親せきなどが口にする「愚痴」やニュースやSNSでも取り上げられる「社会問題」から「仕事をする」ことに対する負のイメージが定着したことが原因とされます。
- 「自己肯定感」が低い/自信がない
就活に対するやる気はあるけれど、「自分らしさ」を面接の場でアピールできるほどの個性を持っていないことが原因となり、自信の喪失、やる気もモチベーションも低下して最終的に「就活はやりたくない」にたどり着きます。
- 取り組みたい分野/やりたいことがない
この理由に当てはまる多くの学生は、就活準備をせず解禁シーズンを迎えてしまった方たちです。業種や職種のことを知らないまま、ネットを漂う情報と先入観から来る知識だけを頼りに就活をしても見つかるものも見つかりません。結果として「何のために就活をしているのか」という目的もなく、ただ周りが取り組んでいるから自分もしなくちゃいけないという動機で活動をしても、受かることはありません。
- お祈り/不採用通知
事前準備から企業研究、そして面接までたどり着けても内定が出るとは限りません。俗にいう「不採用通知」から来る「自信の喪失」が原因です。就活をしていく中で「内定書」以外に「不採用通知」や「お祈りメール」を頂くのは必然です。それら通知の内容を真に受け、「自分は魅力のない人なんだな」と考えてしまい、結果として就活に対するモチベーションの低下、面接に臨んでもまた例の通知が来るに決まっているとネガティブにとらえて「就活をやりたくない」気持ちになってしまいます。
1-2.「やりたくない」は甘え?
「就活をやりたくない」といえば「それは甘えだ」「大学4年生である以上就活をしなくちゃいけないもの」と物申す方もいれば「現実から逃げるな!」と恫喝してくる方もいらっしゃいます。
しかし、「やりたくもないことをやらせる」のは全くの逆効果です。やりたくないという気持ちが強いままで就活をしても、書類選考、面接の過程で落とされるのが目に見えます。それゆえに「自信の喪失」に繋がり、最終的には「就活鬱」という精神病になる恐れもあります。
やりたくもないことを無理にする必要はありません。それを周りの人が卑下しようとどんな言葉で罵られようとも、「自分がやりたくない」と思ったら就活とは違う別の手段を考えれば問題はありません。
つまり「就活をやりたくない」は「逃げ」でも「甘え」でもありません。あなた自身が決めた人生における1つの選択肢として考えてください。
1-3.「やりたくない」時こそ「鬱」になりやすい
前向きに就活を取り組んでいっても、お祈りメールや不採用通知を企業側からもらうばかりで「また来た」「もう就活をやめたい」という気持ちが出てきます。しかし取り組みに真面目な人ほど「就活をしないと将来が不安」「金銭的余裕がない」「生活が苦しくなる」などの理由をこじつけて就活を継続してしまいます。それでもまたダメだった。
「落ちる」という言葉は就活に取り組む学生の間では禁句とされています。それは「落ちる」という言葉をネガティブなものとして捉えてからです。
「落ちた」と分かった瞬間からあなたのやる気はどんどん低下していきます。その状態のまま面接に臨んでもいい結果を得られるかというとそんなことはありません。このまま負の連鎖が続く一方です。この連鎖を断ち切るためにも、一度就活から離れて気持ちと身体をリフレッシュさせましょう。
悪循環の続く環境に身を置くだけで、頭の中もずっとそのことばかり考えこんで思い詰めてしまいます。そして最終的に「就活鬱」になりかねない状態まで行きます。
勉強やスポーツ同様、就活も疲れた時は一度活動を辞めて頭の中をスッキリさせましょう。休んでいるときも「時間を無駄にしている」と考えるのはNGです。休むことも就活をしていく中で大切な活動の1つです。
2.就活以外にも道がある
2-1.就活以外の進路は多く存在する
今の時代「就活」だけが、学生がとるべき次の道を切り開く手段ではありません。以下は「就活をしない」ことを決めた場合の進路選択です。
1.フリーターとして仕事をしていく。
大学卒業後は正社員として企業に勤めるのではなく、「フリーター」として仕事をしていく選択があります。
多くの場合、「フリーター=社会の底辺」などのイメージが先入観として思い浮かぶ方も少なくはありません。しかし、「フリーター」は様々な仕事を経験して、将来的に自分にあって仕事に就くことを目的とした方法です。
「フリーター」は正社員とことなり、働く時間を自分で設定できるうえ、空いた時間を資格の勉強や趣味などに割り当てることができます。ある意味では自分の理想とするライフスタイルを実現することができる働き方でもあります。
しかし、給与面では乏しく、自分に合った仕事を見つけて就活を始めても「既卒」扱いで面接が執り行われるデメリットがあります。
2.大学院への進学
大学で先行している分野についてもっと深くまで研究したいということで、「大学院」への進学を決めることも1つの選択です。
「大学院」に進学することで、今専攻している分野の研究をより深くまで進められるだけでなく、就活の時期を延長できるほか、将来的なキャリアプランをじっくり考えられる時間を確保することができます。同様に就職後も学部卒よりも高給料を頂けることがあります。
しかし、大学院進学は高額な学費を再度支払う必要があると同時に、受験勉強も必須となります。進学を決める前に一度ご家族と話し合うだけでなく、「なぜ大学院への進学を決めたのか」「進学後は何を学びたいのか」という明確な目的と理由を持って決めましょう。
3.海外留学/ワーホリをしてみる
大学卒行後は海外留学をしてみたり、行先で就労する「ワーホリ」をしてみるのも選択肢としてあります。
国内では得られない経験から価値観、文化の違いに触れながら、自分は結果としてこんなことをしたい、やってみたいことが刺激されて広い視野を持って取り組むことができます。また語学力や多様性を身に着けられるメリットがあります。これは就活において高く評価され、有利に選考を進められる武器ともなります。
しかし、こちらも大学院進学同様に「高額な資金」を必要とします。海外留学はもちろんのこと、ワーホリでも初期費用から就労手続きと始める前から多額の出費が見込まれます。
故にこちらの進路を選択する前に「明確な目的」と「理由」を定めておくことが大切となります。
4.フリーランス/起業する
多様化の時代である現代において、自ら会社を興して利益を生み出していく「起業」や個人事業主として企業に属することなく利益を生み出していく「フリーランス」として仕事をしていく選択肢があります。
この2つに共通するメリットは「自由の幅が広い」ということです。企業に属せばそこに敷かれた「規律」に従って業務をこなしていきます。しかし、「起業やフリーランス」は基本的には組織に属しません。それゆえに働く日や時間、場所まで自由に選択することができます。同様に業務の内容や方向性も決められます。誰にも縛られることなく、自分らしく働くことを理想とする方にとっては最大のメリットといえます。
しかし、これら2つの選択肢にもデメリットがあります。
それは「収入が不安定」であることです。
自分が主体となって仕事をしていく以上、利益を日々生み出していかなければ収入はなく、最悪の場合赤字続きで破産する恐れがあります。
デメリットのような事態にならないためにも、前もって経験や知識を積んでおくこと、そしてどうしてそのような働き方をしたいのか、という理由と目的を明確化しておくことが大切です。
5.公務員として仕事をしていく
最後は正社員として仕事をしていくのではなく、公務員として仕事をしていく選択です。
選考は「筆記試験」の結果を基に選考を進めていくため、面接や前座として行われる「グループディスカッション」に苦手意識がある方は、安定職の代名詞といえる「公務員」を目指してみるのも選択の1つです。
ただし、公務員の倍率は高いため、早め早めに対策をしておくことが望ましいです。
2-2.しない場合のメリット・デメリット
次に「就活をしない」という選択肢を選んだ場合のメリット/デメリットです。
まずメリットとして挙げられることは大きく分けて4つ存在します。
1.自由な時間が増える
就活を行っていく上でまず準備段階で「自己分析」や「企業研究」などの準備から企業側に提出する「ES」や「履歴書」を書く毎日、そして面接対策と膨大時間を消費します。しかし、しないと決めた今、これら作業はしなくて済む田でなく、その作業に割り当てるべき時間を「自由」に使えます。この時間を何に充てるかは自由です。遊びに使うのもいいですし、卒業論文に割り当てるのも選択肢の1つです。自由だからこそ、有意義に時間を活用しましょう。
2.やりたい仕事/身に着けたいスキルを選べる
襲来的な目標やキャリアプランがないまま、就活をしても活動に対する意欲ややる気が継続することはありません。就活をやるときめたその時は本気で取り組むのもいいですが、しないと決めたのならば、まず「自分がどんな分野興味があるのか」「将来的にはこんなことをしてみたい」と漠然とした理想像を書き出してみましょう。そこからどんなスキルや知識が必要なのかを調べて実際に行動してみましょう。
これもまた就活をしないと決めた時にできる「自由時間」の有効活用とも言えます。
次にデメリットです。
1収入が不安定
就活をしない場合、「自由な時間」を得られる反面、毎月一定額の資金が持っていかれます。就活をしない選択肢は「収入の不安定」を代償に時間を買っているといってもいいでしょう。
2.社会的信用の損失
クレジットカードや住宅ローンなどを組む場合、「〇〇会社」に勤めていることで、相手から信用を得られます。そこには収入の高い低いで判断されているのではなく「安定した収入がこの人にはあるから信用して組めるし、返済も大丈夫だろう」という信頼があるから組むことができます。しかし、会社に属することなく収入もなければ、「この人は返済を停滞するまたは遅延する恐れがある」という見方をされ、結果として信用の損失につながります。
3.再就職が困難
上項にて「フリーター」も1つの選択肢としてご紹介しましたが、単純に「就職したくない」つまり「正社員として会社に縛られたくない」という理由で「フリーター」を継続するのは危険です。
最も「フリーター」は「自分に合った仕事を探す方法」であります。このまま続けても得た経験からこういうスキルを得たということは難しいです。また自分に合った仕事をようやく見つけた時、すでに再就職が難しい年齢にまで達していた場合、再就職は非常に難しいものとなります。
「就職をしない」という選択は一見して自由な時間がある反面、その代償となるデメリットは今後の人生を大きく左右するものです。この選択をする際は、明確な理由とその先のプランをしかりと練っておくことが大切です。
3.やりたくなくても、すべきことはある
3-1.自己分析は済ませておく
「就活をしない」「やりたくない」を選択したとしても、最終的には仕事をしていかなければ生活はおろか生きていくことすらままなりません。そのため、将来のためにも今のうちから「自己分析」はしておきましょう。
今は「就活をしない」を選択していても、時過ぎれば「さあ就活をするか」という志に切り替わります。そのためにも、自分という「個」を早い段階で分析しておくことが後々功を成してくれます。
ここで行う「自己分析」は「就活をする」と決めた時の準備と同じで構いません。まずは自分を客観的に見た時、どういう人物でどういう性格をしているのか。こういうことに興味があって将来的にはこんなことをしたいのかを書き出して、それに伴う必要な知識やスキル書き出してみる。ここまでできれば問題はありません。
何事もまずは「書き出す」ことです。自分に向いていることが今は見つからなくとも、書き出した情報を頼りにいろんなことに挑戦してみましよう。
3-2.会社説明会に参加する
上項で行った「自己分析」の情報を基に出した「興味ある分野」の仕事をしている企業の説明会に参加してみましょう。会社説明会の場では会社HPや求人広告の中に書ききれないことやこれからの取り組み、そして社員の目線でそれら情報を教えてくれます。今はやる気がなくても、話を聞くだけで業界の流れや仕組みが分かってきます。
3-3.先輩に話を聞いてみる
こちらも「自己分析」で書き出したことを基に、その分野の仕事に就いている先輩に話を聞いてみるのも手です。そこから聞けるものは、仕事をする上でのリアルな気持ちや、業界そのものから感じ取った雰囲気というものを聞くことができます。
3-4.人生設計を考える
自己分析とはまた別で、将来的に自分はこういう生活を送りたいという想像で「今後10年」の人生設計を立ててみましょう。書き出す内容は、こういう仕事に就いて、厳しい職場換気用に身を捧げつつもお金を稼ぐのか、それともやりがいを感じられるような仕事に就いて安定した収入を得ていくのかなど、具体的な内容を書き出していくのがポイントです。
人生において「正解」と呼べることはありません。理想と現実に差があろうとも、その差を埋めるのは書き出したあなたの行動次第で埋めることができます。
方向性が決まったら、あとはそれをどう実現するか、まず何から始めていくのがベストの行動ステップリストを作成して情報を整理していきましょう。
あとはそれに従って行動をしていくだけです。
4.まとめ
以上が「就活をやりたくない」と思う学生の理由、「やりたくない」「しない」を選択した場合に取るべき行動についてご紹介しました。
今のご時世、大学4年生になったら「就活をするのが当たり前」という風雌雄にありますが、そこに義務と呼べる「強制力」はありません。さらに周りがしているから自分もしなくちゃいけないのかと、流されるがままやっても結果が付いてくることはありません。
ただ時間を浪費して、精神的ダメージを受けて自信を喪失していくだけの活動となってしまいます。
今は「就活」だけが次の進路を決める選択肢ではありません。大学院への進学、海外留学、フリーターとしてしばらくは仕事していくなど、切り開く道はたくさんあります。「就活をやりたくない」と思ったらそちらの道に進むのも1つの選択です。
それを「逃げ」や「甘え」と考えることもまた不要です。
この選択をしたのはあなた自身の意志である以上、何者であろうとそれを罵ることは許されません。
ここで知ってほしいこと、それは「就活」は将来を切り開くための1つの手段であり、選択の1つです。この選択肢ばかりに固執するのではなく、多くのことに手を伸ばし、視野を広げてください。自分の人生を豊かにできるのはあなた自身です。