大学の学部の中には「教育学部」と呼ばれる学部があります。
この学部に所属している学生や、「出身者」という肩書を耳にすれば多くの方が「将来は教員になる」と考えるでしょう。
しかし、「教育学部」に所属する学生の多くが、「必ず」しも「教員になる」というのは大きな間違いです。
最も現在は「教育学部」所属の学生の多くが、資格取得を利用して一般企業へ就職をしている傾向にあります。
そこで今回は、「教育学部」に所属する学生が就く主な就職先のご紹介と併せて、就職活動の取り組みについて紐解いていきます。
教育学部ってどんなことを学ぶのか?
「教育学部」のイメージでやはりグッとくるものは、「教員になるために必要な実学」を学ぶ場というのが挙げられます。
しかし、「教育学部」で学ぶことは、「教員になるため」ではなく、「教育とはどうあるべきか」を考察して研究する学問です。
一言で「教育」と称しても、この言葉が当てはまる現場は多岐に渡ります。例えば、初等・中等・高等教育といった「学校教育」の現場、保護者が子どもを指導し、教育する「家庭教育」、はたまた各企業が「新卒・中途採用者」に業務やビジネスマナーを指導する「企業内教育(研修)」など、様々な現場にいる人間と社会を「教育」を研究テーマとして観察して分析・考察していきます。
また研究を進めていく中では「社会学」や「心理学」などを用いて行っていくことがあります。
一方で多くの方がイメージする「教員になるために必要な実学」を学ぶ学部は、「教員養成系学部の領域」に当たります。
注意点としては、どちらも「教育学部」の名前で属していることが多いです。
教育学部は「就活が不利」って言われているけどホント?
「教育学部出身・所属の学生の多くが将来は教員になる」というイメージが強いです。
しかし、「教員になる」という学生が多いわけじゃありません。大半が一般企業への就職を志望しています。
理由には、
- 想像していた以上に現場がきつかった
- 自分が思っていた仕事とは違った
などの理由から、教員になることを断念する学生も一定数はいます。
そうなった場合、一般企業への就職が妥当ということになります。
その中で、ネット上では「教育学部出身者の就活は不利」とささやかれていますが、決してそのようなことはありません。
学部で学んだことや取得した資格を活かせる場は、何も「学校教育」に限らず、多数存在します。
また学業位階の時間を活用して得た資格を利用して、就活に臨むのも手段の1つといえます。
ついては自分が持つアドバンテージを如何に活用するかによって、就職の状況を有利な方向へと持ち出すことができます。
教育部生が就活を有利に進められる
在学期間に取得した資格を活かす
「教員免許」は「教育学部」に進学せずと、「文学部」や「理学部」に進学することでも取得ができます。ただしこの2学部で活用できる学校教育機関は「中等・高等教育」の現場で活用できる「教諭免許」となります。これよりも下に位置する世代の教育に当たるためには「教育学部」で学ぶしか手はありません。
以下は「教育学部」に財政している期間内に得られる資格を活用した就職先です。
幼稚園教諭免許
まずは「幼稚園教諭」として仕事をするために必要な資格です。
この資格は4年制大学の教育学部を卒業することで「幼稚園教諭第一種免許」の取得ができます。
第一種を取得することで将来は幼稚園の園長先生に慣れるほか、幼稚園の経営、職業訓練などの養成学校の講師として仕事をすることができます。
似ている資格として「保育士資格」というものがあります。
こちらの資格は厚生労働省管轄の「福祉分野」に属する資格になります。
一方の「幼稚園教諭第一種免許」は文部科学省管轄の資格となり、学校教育法に基づいて教育を施すための資格となります。
小学校教諭免許
「小学校教諭免許」は市立・私立の小学校で教育をするために必要な免許で、4年制大学の教育学部を卒業することで取得ができます。
小学校教諭は、国語・算数などの主要科目と体育や図画工作などの副教科をすべて1人でこなしていかなくてはなりません。
また大学によっては「小学校教諭免許」の取得が叶わないところがありますのでご注意ください。
中学校教諭免許
「中学教諭免許」は、市立・私立の中学校で教育をするために必要な免許で、4年制大学を卒業することで第一種免許の取得ができます。
上記2種類の免許とは異なり、担当する教科別に免許が必要となります。
高校高等学校教諭免許
「高校高等学校教諭免許」は、公立・私立の高校で生徒を指導するために必要な免許で、他の免許同様4年制大学を卒業することで第一種免許の取得ができます。
「中学校教諭免許」同様に担当科目別に免許を取得しておく必要があります、またより専門的な知識が高等教育の現場では求められます。
特別支援学校教諭
「特別支援学校」に該当する「盲学校」や「ろう学校」など特別な学校現場で教育を行う際に必要となる免許で、4年制大学を卒儀容することで取得ができます。
ただし「特別支援学校」で指導するには「特別支援学校教諭第一種免許」と合わせて「小・中・高」いずれかの教育現場で必要となる免許を取得しておくことが条件となります。
また一般校と併設している「特別支援学校」の場合は、当免許を必要としません。しかし、的確な指導を行うためならば取得しておくに越したことはありません。
教育学部生が就く就職先
地方公務員/国家公務員
まずは「地方公務員」です。
前節でご紹介した「学校教育」の現場で仕事をする「教師」も「地方公務員」という位置づけとなります。
しかし、こちらでご紹介するのは「一般企業」という位置付けからなる「地方公務員」です。
たとえば各都道府県の市役所・区役所で仕事をする職員や、市民を守る「警察官」や「消防隊員」などが挙げられます。
また学生の中には「国家公務員」を目指す学生もいます。
理由は試験内容が教員採用試験の内容と通じるものがあるためです。
特に教育現場を大きく変えたいと思うのであれば、「文部科学省」に入省を目指してみてもいいでしょう。
他の教育機関
「学校教育の現場」以外でも、生徒に教育を施せる現場は多くあります。
たとえば、学習塾や予備校、家庭教師などの学習機関に位置付く企業や生徒を含め社会人を対象とした語学学校、資格取得に特化した学校、職業訓練を執り行っている学校など様々あります。
そのほか、体を動かすことが好きな学生であれば、ジムのインストラクターとしても活躍ができます。
いずれかの現場を舞台とする食儀容に就いたとして、共通して言えることがあります。
それは
- 教えることに集中できること
- 業務処理は事務との役割分担がされているため、自分の業務に集中できる
- 指導要領は自分スタイル
という点です。
学校教育の現場では、文部科学省が定めたプログラムに従って、指導をしていきます。しかし、一般企業の教育現場では、自分がいいと思った指導スタイルでプログラムを進められる利点があります。また業務も事務担当がバックにいるので、「教えること」にとことん集中することができます。
出版業界
次は「出版業界」です。
「教育学部出身者」が就く「出版業界」では主に、教育現場で活用する教科書やテキスト、問題集などの制作に携わっています。
これら商品の対象は、幼児から学生向けとしています。
取り扱いの教材が、授業で使う教科書から自学自習で活用する学習教材、受験勉強対策、各種資格の取得に対応したテキストなど、様々なものを取り扱っています。
教育関連の教材開発に携わった場合、それを各教育現場・書店に売り込む営業業務が発生します。営業していることになりますが、間接的には自分らが開発した教材を使用して「生徒に教えている」こととなります。
各教育現場・書店に教材を売り込む場合でも、制作する側に立ったとしても、「教育の手伝い」をしているため、間接的とは言えやりがいは感じられます。
行動次第で有利に持っていける
「志望理由」を明確にしておく
「教育学部の学生は就活では不利」とネット上ではささやかれていますが、それは「一般企業側」から問われる質問に答えられなかった場合に限ります。
企業側も出身学部が「教育学部」となれば、「教員になる」ことが通であると思うでしょう。
しかし、なぜ「教員」ではなく、うちを志望したのかを問うことが、教育学部の学生に限って多々あります。
質問の内容は「なぜ教育学部出身なのに教員にならなかったの?」です。
聞き方によっては、この4年間大学に通ってきた意味を問うものとして受け止めることができます。
企業側も学生を精神的に追い詰めようなどとは思っていません。しかし、学生側にとってはこれが苦と感じる方もいるでしょう。
しかし、明確な理由さえ持っていれば、自分を追い詰めるようなものではありません。答える際に注意すべきコトが2つあります。
「教員」という職業を否定しない
「教育免許」を取得する過程で、教育学部の学生は一度学校に出向いて実習を行います。
その時に
- 自分には合わない
- イメージしていたのと違う
など、教育現場の在り方を見るでしょう。
その時得た経験をきっかけに、教員ではなく一般企業への就職を目指すようになります。その時に問われるのが例の質問です。
その回答として、「実習で得た経験から教員の仕事を否定する」ものをつい言ってしまうことです。
確かに教員の仕事は、担当教科を教えるばかりじゃなく、部活の受け持ちや生徒の進路指導、AOや推薦入試の対応など様々です。
その大変さを理由として教員以外の道を歩むとなれば、その企業に就いてからも同じ理由で辞められると企業側が判断をします。
ついては「教員」の仕事に敬意を表しつつ、自分がなぜ一般企業への就職を目指したのかを答えると相手も納得してくれます。
志望する業界・職種で何をしたいのか
上記と合わせて一般企業への就職を志望する際は、なぜその企業に就職をしたいのかの「理由」と「就職後はどのようなことをしたいのか」を具体的に説明できるようにしましょう。
この2点をしっかり抑えておくことで、例の質問を攻略することができます。
回答の流れとして
- 「教員よりも自噴がやりたいと思う仕事が見つかった」ことを軸とした説明
- 志望先となる企業に応募した理由
- 「入社後はどのようなことをしたいのか」を具体的に述べる
の3点を流れとした回答ができるといいでしょう。
教師と一般企業への就職を併願する
実際に就職活動をしていく中で、卒業を機に「教員免許」が叶いますが、活かせる場に就くことができるかは本人の頑張り次第にあります。
同様に「教員」になることを志望していたとしても採用するかしないかは、学校側に委ねられます。最悪の場合、就職浪人ということもありえます。
このような状況にならないためにも、「公務員試験を突破する」志が最もですが、最善な策として「教員」と「一般企業」への就職を併願するという方法があります。
併願する理由の多くは「進路の選択肢が増える」ことにあります。
「教員免許」取得が叶ったとしても、あなたを採用するかしないかは学校側の判断に委ねられます。
合格のために学校教育機関を片っ端から受ければ、どこか1校はと安直な考えをする学生もいるでしょう。
しかし、現実は非常です。数を打っても1校も受からないということはよくあります。その状況を打開する意味でも、一般企業との併願をしておくと進路の確保ができます
また企業の面接を通して得た経験を、教員採用試験の場で役に立てることもできます。
もちろん、企業と教育機関のどちらからも「内定」を頂けたのなら、自分が進みたいと思う方に進むのがベストです。
「教員」になるか、「一般企業」で仕事をするか、「併願」は多くの選択肢を教育学部の学生に与えてくれる最善策といえます。
併願を利用するメリットをまとめると以下のようになります。
- 就職先の選択肢を増やせる
- 一般企業の面接雰囲気がまんま、教員採用試験の面接でも通用する
- 企業からの内定があれば、先の心配をせずに済む
まとめ
以上が、「教育学部」に所属する学生が就く主な就職先のご紹介と、就職活動への取り組みについてでした。
「教育学部に所属している」という理由で、「将来は教員になる」というイメージが強い学部に通う学生の多くが、一般企業への就職を志望している実態にあります。
その理由は様々ですが、在学期間中に得られる資格を活かせれば、学校教育の現場以外の教育現場で仕事をすることが可能です。
もちろん、それ以外の業界・職種に就くことも同様に可能としています。
ただし企業側からも「なぜ教員ではなく、うちを選んだのか」と、いう目で見て、質問をしてきます。
しっかりとした理由と明確な目標を持っていれば、不利な状況を覆すことが可能です。
そのためにも、「自己分析」を怠らずに行いましょう。