税務・会計などの仕事から「金銭の流れ」を学べる会計業界に、興味を持っている学生が少なからずいるはずです。
この場合、就職先の候補として挙げられるのは会計事務所または税理士法人のいずれかになります。
加えて、どちらの就職先候補も新卒や中途採用の募集をかけているイメージがないですよね?
しかし、現状会計業界は「人手不足」という問題を抱えており、この問題解決のために現在では積極的に採用活動に取り組んでいます。
その活動の一環として、「会計士インターン」開催が急増しています。
そこで今回は、会計士インターンの内容に触れながら、インターンを通して得られる経験・スキルについて解説します。
会計士のインターン内容
ここでは、各期間に応じて実施される会計士インターンの内容をご紹介します。
1day・オンライン形式のインターン内容
会計士インターン実施期間が最も短い1dayインターンでは、以下のものが催されます。
【1dayインターンの内容】
- 事務所概要・業務説明
- グループディスカッション
- 業務疑似体験
- 質疑応答・座談会
上記4つのプログラムをベースにインターンが催されます。
また、インターン開催事務所別にインターン参加後のフィードバックを設けているところといないところがあります。
インターン参加後のフィードバックがあれば
- 自分には何が足りないのか
- どういう点がよかったのか
など、主観ではわからないことを客観的に見た時どう写っているのかを知る機会になるので、「フィードバッグあり」の1dayインターンがおすすめです。
短期・長期のインターン内容
短期・長期間に及ぶ会計士インターンでは、以下のものが催されます。
【インターン内容】
- 会計処理
- 経理業務
- 給与計算
- 資料整理
などの業務アシストをメインに行います。
業務では、実際に仕事で使用している会計ソフトを用いて行います。
この時多くの学生が「家計ソフトの使い方を知らないといけないの?」って思いますが、インターン初日に会計ソフトの扱い方を先輩社員がレクチャーしてくださるので、心配ありません。
また他の業務を任されても、マニュアル完備、先輩社員が付き人としてバックアップしてくれます。
実際にインターンに参加した学生の声
以下は実際に会計事務所が開催した短期・長期インターンに参加した学生の声です。
『2週間ちょっとの短期インターンに参加しました』
この度私は2週間ちょっとに及ぶ会計士インターンに参加しました。
任せてもらった業務は、法務局・税務署への各種申請手続き、伝票・稟議書・元帳綴・一覧式総勘定元帳のファイリング・仕訳入力・決算整理・申告書作成・決算チェックリストの作成などを行いました。
いずれの業務も「PCA会計」というソフトを用いて行いました。
インターンを通じて顧客に提出する書類の取り扱う際の心構えや、仕訳帳を確認して給与の支払い方など多くのことを学びました。
日々の業務は似たものが多い「ルーチンワーク」でしたが、日を追うごとに作業スピードが速くなり、業務を通じて学んだことをしっかり吸収できている!って、いう実感がありました。
短い間でしたが貴重な体験をありがとうございました。
――大学生・男性
『3週間の短期インターンに参加しました』
私は今回3週間の短期インターンに参加しました。
インターン中に行った業務は、「PCA会計」というソフトを用いて、データリカバリ・仕訳入力・決算書類の作成・費用収益の計上などを行いました。
実習で聞いていたものと、実際に業務をやるのとでは、やっぱり違いがありました。
簿記資格取得で得ていた「勘定科目」の処理をする機会があったときは、教科書通りのやり方ではなく、クライアントによって独自のやり方があることを知りました。
インターン初日はやっぱり、緊張しますが、先輩社員がバックアップしてくださるので、充実したインターンを過ごせました。
――大学生・女性
インターンを通して得られるスキル・経験
以下は、会計士・税理士のインターンに参加しない限り、得られないスキル・経験です。
【得られるスキル・経験】
- PDCAサイクル
- 多業種への理解
- 業務の目的・意味の理解
- 将来像が見られる
- 決算表が読める
スキル①PDCAサイクル
会計士・税理士に限らず、どんな仕事でも「PDCAサイクル」に則って期日までに仕事を終わらせます。
会計士の業務を例にすると「今日から10日後にクライアント先に月次報告をしに伺う」というのが決まった場合に取る行動は以下のようになります。
- 10日後までに何を準備すべきか計画立て
- 資料の準備・作成
- 作成した資料の確認・修正
- 月次報告に行く
となります。
その間にも、通常業務が出てきますので、この以来と並列して業務を遂行していく必要が出てきます。
この場合は、自分の中で期日を設けて、最優先で取り掛かる業務は何か…というような「順位付け」を行って業務を進めていきます。
会計士が行うすべての業務は、PDCAサイクルに則って行うことが通なので、インターン期間中に自然と身につきます。
スキル②多業種への理解
会計業務では、クライアント先となる企業が取り組んできた事業活動を記録します。
記録を付けていくことで、その企業がどんな取り組みをしていたのかという、企業・業界ごとの特徴を記録の中から読み取れます。
加えて訪問業務などを通じて、その企業がどんな色をしていて、取り組みをしているのかを見聞きできます。
スキル③業務の目的・意味の理解
上記で挙げた「会計業務」は、何のために行うのか。その「業務の目的」を考えたことはありますか?
行う目的は「その企業が取り組んでいる企業活動を理解する」ために行います。
企業情報を正確に理解するためには、まず現場をイメージすることが大切です。
簿記資格取得の時に知った知識と、実務では大きく異なるケースが多々あります。
ただ問題に向き合うだけでなく、実務を通して仕訳のパターンや簿記に対する理解を深められます。
スキル④将来像が見られる
会計士・税理士のインターンに参加していると、社内の方を含めて様々な業種・職業についている方々と交流する機会があります。
この交流を通して、これまであやふやだった自分の将来像を固められたり、今まで自分が知りもしなかった業界・職種への理解ができます。
将来像がハッキリすれば、そこに向かうためにはどう行動すべきかが見えて、モチベーションが格段に上がります。
スキル⑤決算表が読める
インターン中にクライアント先の決算表を、目にする機会があります。
最初は読み方が分からないと思いますが、先輩社員からの教授があって読めるようになれば、就職活動中に目にする企業の決算表も読めるようになります。
実務で決算を組む機会が1度でもあれば、入力する数字から企業の取り組みがイメージできます。
会計業界の現状と実態
会計業界が抱えている「人手不足」問題
会計業界全体は現在、人手不足問題に悩まされています。
この問題を少しでも解決するために、大手税理士法人や小規模の会計事務所など、各部署で頻繁にインターンが開催されています。
【インターン開催の意図】
- 社風や業務内容を知ってもらいたい
- 幅広い人材と出会いたい
仮に会計業界への就職志望が低くても受け入れる姿勢でいます。
ここまで懐が広いのは、前述した「人手不足問題」を緩和するためでもあります。
実際に、会計業界の業務に漠然としたイメージしか持ち合わせていなかった学生が、数週間に及ぶインターンに参加した学生が、業務を通じで自分には適性があると判断して資格取得を目指したという事例があります。
結果として現在、会計業界の人手は右肩上がりの増加傾向にあります。
現場の実態を知るなら長期インターンに参加すべき!
学生のうちから税理士や会計士が属する会計業界を目指しているなら、「長期開催」の会計士インターンに参加するのがおすすめです。
【理由】
- 具体医的に実務をインターン期間中に経験できる
- セミナーなどで得た知識・スキルがどれほど通じるか確かめられる
- 金銭の流れを知ることができる
などの理由が挙げられます。
また事務所の中には、コンサル系の部署を設けているところがありますので、コンサル系の業界を志望している学生にとっては、税理士・会計士の視点からコンサル系がどう映っているのかを見聞きできる絶好の機会になります。
会計士と税理士の違いは?
ここでは、会計士と税理士の違いについて簡単に解説します。
それぞれにある「独占業務」
税理士と会計士は、どちらも税務や会計などを中心に業務を行っているため、よく業務内容を混同している方がいます。
しかし、それぞれの業務には、特定の資格を持っていないとできない「独占業務」があります。
税理士の独占業務:税務業務
税理士の業務は主に、クライアント先の税務処理、納税・節税などのアドバイスといった「税金」に関する業務を中心に行います。
そんな税理士が行える独占業務は、「税務業務」で以下3つの業務ができます。
【税業務の中身】
- 税務代理
- 税務書類の作成
- 税務相談
の3つを税理士法の規定に則って行えます。
会計士の独占業務:監査業務
会計士の独占業務は「監査業務」という、クライアント先が作成した財務諸表が正確なものかどうかを第三者の視点から評価する業務を行えます。
この業務は、公認会計士法の規定に則って行えます。
会計士は上記の独占業務のほかに、財務諸表監査・内部統制監査・コンサルティング(MAS)・IFRS(国際財務報告基準)関連業務も行います。
メインクライアントの違い
税理士の場合
税理士が行う「税務」は、税金を納める義務がある法人・個人そのすべてが対象です。
そのため、クライアントの幅は大企業から中小企業、さらには個人事業主に至るまで幅広く訪問して税務を行っています。
会計士の場合
会計士が行う業務対象には、ある条件が設けられています。
その条件とは
- 最終事業年度の貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上
- 最終事業年度の貸借対照表の負債の部に計上した額の合計が200億円以上
の上記いずれかの条件が当てはまった企業に監査が入るよう義務化されています。
結果、この条件が当てはまるのが、大手企業になります。
会計士インターン参加に伴って得ておくこと、積んでおく経験はある?
これから会計士インターンに参加を考えている学生は、インターン参加まで
- 日商簿記3級以上の取得
- 基本的なPC操作が行えるだけのスキル
の2点を身につけておくことをおすすめします。
1dayやオンライン形式のインターンでは、「業界未経験」または「資格未取得者※ただし現在勉強中なら可」などの条件を設けており、誰でも気兼ねなく参加できる環境を整えています。
しかし、短期・長期の会計インターンでは、実際に取り組んでいる業務をインターン中に行うため、「日商簿記3級以上を取得している」ことを応募必須条件に定めている事務所が多数存在します。
会計業界に就職を考えている場合は、インターン参加までに「日商簿記3級」を取得しておきましょう。
まとめ
以上が、会計士インターンの内容に触れながら、インターンを通して得られる経験・スキルの解説でした。
将来は会計士になりたいと考えている学生は、ぜひとも長期開催の会計士インターンに参加して業界・事務所の社風や実務を体験することをおすすめします。
加えて、セミナーや業界・職業研究で得た前知識と実際にやるものとでは、理解の深まりが大きく異なります。
インターンに参加することで、イメージとのギャップ、ミスマッチ防止になります。
また、業務を通じて他業種で仕事をしている方々との、交流が盛んにあるのも会計士インターンならではの醍醐味です。
インターンを通じて得た経験・スキルは今後の就活を大きく前進させる糧になります。
初めてのインターン参加ともなれば、うまく立ち回れるか不安になるでしょう。
しかし、バックには必ず先輩社員がサポータとしてついてくれますので、分からないことは心置きなく聞いて、自分が知らなかったことをどんどん吸収していきましょう。