ほとんどの企業において、エントリーシートや面接で取り扱われる「学生時代に力を入れたこと」、通称「ガクチカ」。
「なかなか書類選考で通らない…」という方は、もしかしたら正しいガクチカの書き方を把握していないからかもしれません。
そこで今回は、ガクチカの書き方や人事が評価するポイント、注意点などについて解説します。
「書き方がわからない」「ガクチカの書き方に自信がない」という方はぜひ参考にしてみてくださいね。
ガクチカとは…
「学生時代に力を入れたこと」を略した言葉。
おもに大学時代での経験を中心に、なんらかの成果や結果を得るためにどんなプロセスを踏んできたのかを重視している。
企業がガクチカを聞く理由って?
企業がガクチカを聞く最大の理由はズバリ、「入社後に活躍できる人材かどうか」のマッチングを見極めるためです。
新卒採用では、仕事や業務の経験を持った人はほぼおらず、未経験からのスタートがほとんど。
そうなると、学生時代にどんな経験を積んできたのか、物事への取り組み方や思考力によって仕事の姿勢を判断するしかないのです。
具体的に企業がガクチカで見ているポイントは以下の2つ。
企業がガクチカで見ているポイント
- モチベーションや人柄
- 仕事でも通用する努力の過程
モチベーションや人柄
ガクチカによって、応募者が物事に対してどのように考えているのか。人柄や性格を把握したいというのも企業が尋ねる理由のひとつ。
たとえ、サークル活動など似通った役職やエピソードを持っていたとしても、それを解決しようとする過程ややり方はひとそれぞれですからね。
困難や何かしらの目標に対してどのように応募者が向き合ってきたか、解決に向けて行動したのかという点を見ることで、仕事に対するモチベーションやベースの人柄を判断する材料にしているのです。
またその思考力や人柄が、企業のなかでどのように発揮されるのか、企業が求める人材にマッチングしているかも企業側としては大事なポイントとなっています。
仕事でも通用する努力の過程
ガクチカでは、物事を進める際に何らかの課題が出てきた場合、その人物が「どのように乗り越えてきたか」の過程を重視する傾向Iにあります。
よく学生のなかでは成果や実績の大きさで勝負する方もたくさんいますが、それは実は企業にとって一番重視するポイントではありません。
確かにインパクトのある経験や実績があれば印象には残りますが、過程のエピソードが薄かったり、明らかに人柄に問題がありそうな内容であればマイナスポイントに。
たとえありきたりな経験やそこまで偉大な実績がなくても、その人のひととなりや仕事に活かせるような能力、問題解決能力があれば充分勝負できるので安心してください。
ガクチカの書き方
一般的なガクチカの書き方は、以下の構成になります。
面接でもエントリーシートでも、おおよそ300字程度で説明できれば企業にも伝わりやすくなりますので、ぜひ意識してみてください。
ガクチカの書き方
- 結論
- (なぜそのような行動をしたのかの)動機、理由
- 目標、困難、課題
- (課題に対する)取り組み
- 結果、成果
- 学んだこと、入社後に活かせること
➀結論
エントリーシートでも面接でも、基本的にどんな質問でも結論から答えるのが重要です。
ガクチカでは、具体的なエピソードの紹介から始めるのではなく、「私が学生時代に力を入れてきたことは〇〇です」のように、まず結果や結論から述べるようにしましょう。
②なぜそのような行動ををしたのかの動機・理由
結論を先に述べたら、「なぜそれをしようと思ったのか」といったきっかけを説明します。
なぜそのような行動に至ったかを説明するこの部分では、学生の人柄や性格、価値観などが最も出てくる部分です。
企業側にとっても自社との相性が合うかどうかを判断するポイントになるため、趣味でもアルバイトでもなぜ注力しようと思ったのかを、しっかりガクチカに盛り込むように意識してください。
③目標や困難だと感じたこと
ガクチカでは目標や努力の過程を知るといった目的がありますので、具体的にどんな困難があったのかを伝える必要があります。
誰しも同じ経験をしているわけでもないですし、難しいと感じるポイントも異なります。
具体的に「どんな壁に遭遇したのか」「どれだけ難しいものなのか」「どんなところが困難だと感じたのか」などを述べるようにしましょう。
数字を盛り込んだり、専門的な知識や用語を要するものであればより分かりやすい説明を心がけるようにしましょう。
④どのような対処や取り組みをしたか
ガクチカにおいて最も重視される努力の過程や対処、取り組みかた。
例えば、アルバイトなどで集客をしたいといった同じ課題であっても、人によって解決方法は異なります。
ひとつの課題や問題に対して、その人がどのように考えて行動したのか。
一見、学生時代の時のエピソードなんて仕事に関係ないと考えがちですが、それが企業側にとっては仕事に対するモチベーションやその人自身の価値観を見る材料となるのです。
具体的な取り組み方を説明するのも大事ですが、「なぜそのような行動をしようとしたのか」など根拠なども一緒に述べられるとなお良いですよ。
⑤行動をした結果、成果
行動をした結果や成果についても、なるべく具体的かつ採用担当者に伝わりやすいように工夫することが大事です。
「かなり」や「たくさん」といった抽象的な表現ではなく、具体的な数字を盛り込むとより採用担当者にも実績が伝わりやすいですよ。
また内容によっては、具体的な数字を伝えづらいものもあります。
そういった場合は、「倍近く」や「数倍程度」などなるべく聞いている側にも理解しやすい表現で伝えるのがおすすめ。
結果や成果はどうしても主観的になりがちなので、できるだけ客観的な評価や他者からの評価などを交えるなどで対策をするといいでしょう。
⑥何を学び、企業ではどう活かしていきたいか
ガクチカでは、過程や結果を伝えるだけでは不十分です。
ガクチカで得た経験を通じて、「どんなことを学んだのか」「会社に入ってそれをどんな風に活かしていきたいのか」を明確にすることも評価対象となります。
学んだことは具体的なスキルや能力だけというわけではなく、考え方や価値観の変化なども含まれます。
ここでは、どのような能力を得たのかの自己分析と、志望企業がどんな人材を求めているのかの企業分析が必要です。
例えば、営業系のお仕事ではコミュニケーション能力や臨機応変な対応力など。
企業側にとってもミスマッチを防ぐための部分なので、業界や職種について調べておくのもひとつですよ。
パターン別ガクチカの書き方
ここでは実際に、ガクチカで良く取り上げられやすいパターンごとに具体的な書き方についてご紹介していきます。
パターン別ガクチカの書き方
- 学業、ゼミ
- アルバイト
- サークル、部活
- 留学経験
学業、ゼミ
学業やゼミなどは比較的、採用担当者からの注目度も高く志望動機にもつなげやすいため、ガクチカでも取り上げられやすい分野です。
ただし、学業やゼミ関連ものだとつい専門性の高い用語やないようになりやすいので、エントリーシートや面接でもだれにでも理解してもらえるように工夫する必要があります。
また、ゼミ関連やグループを束ねた経験や、発表で結果を残した経験があればリーダーシップや仕事を遂行する能力につなげやすいためおすすです。
- 成果や実績だけではなく、課題解決や過程を盛り込む
- 個人よりもグループで達成したことをアピールする
- 専門性の高い分野なら、分かりやすさを意識して説明する
- ゼミ活動だと組織運営に結びつけやすい
例文
私はゼミの代表として、〇〇をしてきました。ゼミでは〇〇を専門としており、毎年おこなわれる〇〇といった発表があります。
しかし、発表に向けた中間報告会ではチームの進捗や完成度がバラバラだということがわかりました。
私はゼミの代表として、進捗状況を確認できるシステムを導入し、さらに発表に向けて報告会を細かく開催することでチームごとのバラつきを解消しました。
結果、どのチームも遅延することなく完成度の高い発表ができただけではなく、教授からも高い評価を得ることができました。
私はチームの目線に立って目標を達成することを学びました。
アルバイト
アルバイト経験をガクチカに取り入れるメリットとしては、企業側が学生に対して仕事への姿勢やモチベーション、入社後のイメージがつきやすいなどが挙げられます。
しかしアルバイトはたくさんの人がやっていることもあるため、差別化を図るのが難しい側面もあります。
- 差別化を図るため具体的な内容を盛り込む
- 入社後に活かせうことをアピールする
- コミュニケーション能力やバイトリーダーはありきたりな内容になりやすい
例文
私は飲食系のアルバイトをしており、この数年で集客力を倍に高めることに成功しました。
うちの店舗では見つかりにくい場所にあることから、以前からピークでもお客様が少ない傾向にありました。
そこで私はバッシングを早くして回転率を上げたり、積極的に店の前で呼び込みをするなどをして対策しました。
そうすると段々お客様の認知度も高まって徐々に常連客も増えてきました。
さらにお客様とのコミュニケーションなども大事にしていくと、半年後にはお客様の数が
1,5倍近くにもなりました。
この経験から私はお客様のニーズを理解し、認知度を上げることの大切さを学びました。
サークル、部活
サークル活動は体育会系・文化系問わずさまざまな活動を通じて、学んだことをアピールできるのでおすすめです。
こちらも学業などと同様、個人プレーのものであってもグループでの活動を強調することで評価にもつながります。
- サークル、チーム運営を通じて会社組織運営につながる学びを話しやすい
- 体育会系では実績が重視されやすい
- 役職などがあるとリーダーシップなどをアピールしやすい
- 個人プレーであってもチームでの学びの方が評価されやすい
- 大会や試合など目標が明確化されやすい
例文
私は〇〇サークルの部長として100人近くの部員をまとめてきた経験があります。毎年おこなわれる大会では〇年ぶりの全国〇位を頂く結果となりました。
これまで賞をもらえなかった理由には、部員が集まる頻度が少なく全員での練習時間が少なかったことにありました。
ですので私は、全員が集まれる日を改めて全員に確認を取り、あらためて練習時間を増やせるようなスケジュールを組み直しました。
そうすれば、徐々に部員同士のコミュニケーションや全員での練習時間なども増え始め、チームワークも強くなっていきました。
さらに、下級生はミーティングにおいて発言がしにくい問題がありましたが、個別に声をかけることで隠れた問題にも向き合うことができました。
私は日々のコミュニケーションや信頼関係の積み重ねが、大きな成果や結果につながるのだと感じました。
御社でもひとつひとつの問題にも臨機応変に対応し、お客様や同僚との関係を構築していきたいと考えています。
留学経験
だれしも経験しているわけではないからこそ、留学経験は採用担当者から注目されやすい珍しいものだといえます。
おもに総合商社やグローバル企業、外資系企業などを希望する場合、語学能力やコミュニケーション能力、行動力などをアピールできるのでおすすめ。
ただし留学したという経験だけをただ話してしまうとアピールにはならないため、「そこで何を得たのか」「そもそもなぜ海外に行こうと思ったのか」などを明確にする必要があります。
- 長期の留学経験なら、語学力アップもアピールできる
- コミュニケーション能力、行動力などをアピールできる
- 専門的な理由なら分かりやすく説明する必要がある
- 業界によっては留学経験者が固まるおそれがあるため、差別化が必要
例文
私は、イギリスに〇ヶ月間短期留学をしていました。語学を習得するだけではなく、現地の暮らしや環境、社会問題について日本と海外との違いを学びたいと思ったからです。
住まいはシェアハウスで暮らしており、日本人は私しかいませんでしたがその分、ほかの国々の話やよりネイティブな英語を学ぶことができました。
はじめは挨拶すらもままなりませんでしたが、留学してから終わりごろになれば世間話ができるようになり、自分から話しかけることも増えました。
また、日本人がいない環境で過ごしたことで、日本人としてのアイデンティティも自覚できました。
入社してからも異なる文化から何かを学ぼうとする心を忘れず、何事にもチャレンジしていきたいと考えています。
ガクチカを書くうえで注意すべきポイント3つ
ガクチカを書くうえではいくつか気を付けなければいけないことがあります。
ここではガクチカを書くうえで注意すべきポイントについて3つご紹介します。
ガクチカを書くうえで注意すべきポイント3つ
- なるべく具体的な数字などで示す
- 嘘は書かない
- 企業に合わせた内容、伝え方を意識する
➀なるべく具体的な数字などで示す
ガクチカでの成果や結果は、なるべく具体的な数字で伝えることでより採用担当者に印象づけられます。
売り上げや人数、〇位といった場合でも、「かなり」「たくさん」「少し」ではなく、「倍近く」などできるだけ明確に言うようにしましょう。
もし比べられるものがないのであれば、「〇年に比べて」「前の大会に比べて」「通常ならここまでだが」などと、過去やその業界の基準などを言ってみるのもひとつですよ。
②嘘は書かない
当然のことですが、ガクチカでは嘘を書いたり明らかに話を盛るのはNGです。
例えばエントリーシートに嘘を書いてしまうと書面として残り、それを元に面接でも質問されるので必ず嘘はバレてしまいますよ。
また、明らかに嘘っぽい内容や辻褄が合致していない内容だと、さすがに採用担当者も気づきます。
そうなると採用担当者と学生の間の信頼関係が崩れ、たとえほかの部分で良いことを言っていても信じてもらえない恐れが!
〇人以上などおおよその数字を示すために、区切りのいいものにする程度なら問題ありませんが、ガクチカではあくまで自分自身の実体験のエピソードをもとに作成するようにしましょう。
③企業に合わせた内容、伝え方を意識する
ガクチカで伝えるエピソードは、応募する企業で活かせる内容に合わせるのが良いでしょう。
希望企業や業種、業界ごとでは、求める人物像やスキル、能力は異なります。
例えば営業系の職種希望ならコミュニケーション能力などがあると望ましいですが、チームプレーよりも個人プレーなどを強調しすぎると、企業の需要とは少しズレてしまいます。
このように企業が求める人物像が理解できていないと、いくら素晴らしい経歴やスキルがあっても評価にはつながりません。
応募する企業や業界のホームページでは、求める人物像や能力などが公開されているところもあるので、あらかじめそこにつながるガクチカを作成するのもひとつです。
また、研究やゼミ、サークルなどにおいても、専門性の高い分野や一般的にはなじみのない種類のものなら、専門用語は使用せず分かりやすく説明する必要があります。
ガクチカを記載するエントリーシートは、その分野を理解している人が必ずしも読んでいるとは限りませんからね。
面接では会話なので補足で説明もできますが、エントリーシートには文字数があるため短い文章で誰が読んでも理解できるよう工夫するようにしてください。
ガクチカがないときはどうしたらいい?
これまでの学生時代を振り返っても、「ガクチカに相当するエピソードなんてない」と悩む人はたくさんいます。
その場合まずはこの1ヶ月や1年間、自分が継続しておこなってきたことなどを振り返ってみてください。
手帳やカレンダー、写真などを見れば、必ず何かしら注力していたことが見つかるはずです。
また、本格的な就職活動までに時間があるのなら、これからアルバイト経験や趣味を初めて見るのもひとつ。
ガクチカは一見、「特別なものでなければいけない」「インパクトがなければガクチカとは言えない」と構えてしまいがちですが、実はそういうわけではありません。
派手な実績や結果がなくても、理由や目的がハッキリしており、論理的な説明になっていればガクチカとしては充分なのです。
自己分析をおこない、長所や自己アピールにつなげられるような自分だけのガクチカを考えてみてくださいね。
~まとめ~ガクチカの書き方に迷ったら就活エージェントに相談するのもひとつ!
今回はガクチカの書き方について、ポイントや注意点などについてご紹介してきました。
今回ご紹介した構成や注意点を踏まえれば、企業にも分かりやすいガクチカを作成できますが、「実際に採用担当者からはどう思われているか」「もっと修正すべき点はあるか」など自分では気づけない問題点もあります。
より完成度の高いガクチカを目指すのであれば、就活エージェントにチェックしてもらうのがおすすめです。
就活エージェントは数多くの就活生をサポートしてきた実績もありますし、専門性や職種に特化した就活サイトならよりピンポイントで好印象を残せるコツなども教えてもらえます。
また、過去の内定者がどんなガクチカでアピールしてきたのか、人事目線でのフィードバックなどももらえるため、面接での伝え方にも活かせます。
なかにはオンラインでの相談にも対応しているところもあるため、自分に合った方法で活用してみてくださいね。