20~60歳すべての人に加入義務が発生する国民年金制度。
20歳になった大学生も同様に加入義務が発生します。
しかし、収入がない大学生にとって、保険料の支払いは負担が大きいですよね。
大学生は国民年金の支払いをどうしているのでしょうか?
自分自身の年金に関わる問題であることを自覚して、制度について学んでいきましょう。
大学生でも20歳になると国民年金の加入案内が届く
日本国内に住むすべての人は、20歳から国民年金の被保険者となり、保険料の納付義務が発生します。
そのため、大学生であっても20歳になると「国民年金加入手続きのご案内」という加入案内が届きます。
原則として、20歳以上の国民は国民年金に加入し、保険料(2020年度:16,540円/月)を支払う必要があります。
大学生の6割以上が「学生納付特例者」である
そうは言っても、大学生が毎月万単位の保険料を支払うのは厳しいものがあります。
そこで存在するのが、国民年金保険料の「学生納付特例制度」です。
これは、申請することにより在学中の保険料の納付が猶予されるという制度で、本人(国民年金の加入対象者である学生自身)の所得が一定以下(※)の学生が対象となります。
※本人の前年度の所得が
「118万円 + 扶養親族の数 × 38万円 + 社会保険料控除」 以下であること
現在、大学生の6割以上がこの学生納付特例制度を利用している「学生納付特例者」であり、保険料の納付を猶予されています。
納付者は2割程度となっており、学生自身、もしくは親が保険料を負担しているようです。
中には、制度自体を知らずに滞納してしまっている人もいます。
「学生納付特例者」になると年金額はどうなるの?
「学生納付特例者」になった場合、将来受け取れる年金額はどうなるのでしょうか?
学生納付特例制度の内容は、「申請により在学中の保険料の納付が“猶予”される」というもの。免除ではなく“猶予”という点がポイントです。
猶予なので、追納(あとで保険料を支払う)しなければ年金額として反映されないため、将来受け取る老齢基礎年金が減額になってしまいます。
追納は申請が承認された月の前10年以内であれば可能です。
3年度目以降に追納した場合は、保険料に加え、経過期間に応じた加算料も支払う必要があるので注意が必要です。
「学生納付特例制度」が適応される期間は?
学生納付特例制度は、“在学中”の学生が対象。
身分が学生である間は、基本的に学生納付特例制度の適応期間となります。
実は保険料を免除してもらえるわけではない
前項でも解説したように、学生納付特例制度は保険料を免除するものではありません。
あくまでも“猶予”であり、追納しなければ将来受け取る老齢基礎年金が減額になってしまうという点がこの制度の大きなポイントです。
将来もらえる年金を減らさないために「追納」をしよう
将来もらえる年金を減らさないためには追納をする必要があります。
前項でも記載しましたが、追納は学生納付特例制度の申請が承認された月の前10年以内であれば可能です。
3年度目以降に追納した場合、保険料に加え加算料も支払う必要があるので注意しましょう。
国民年金の加入手続きをしなかった場合はどうなる?
もし国民年金の加入手続きをしなかった場合、私たちの生活にはどのような影響が現れるのでしょうか?
ポイントは “老後の年金”と“備えのための年金”の二つです。
まず一つ目は「老後にもらえる年金が減る」ということ。
2017年8月より、老齢年金を受給するためには、最低でも通算10年(120カ月)以上は年金保険料を納める必要があると定められています。
年金保険料の納付期間が短いほど、受給できる金額は少なくなってしまうのです。
2019年度を例に挙げると、20~60歳の40年間(480カ月)年金保険料を支払った場合、年間の受給額は780,100円であるのに対し、支払い期間が10年間の場合は195,025円まで下がっています。
40年間の支払いで月6.5万円程度。
これを多いととるか少ないととるかは人それぞれですが、あるのとないのではかなり大きな差です。
老齢年金は私たちが生きている限り受給することのできる年金。国民年金への加入は、将来の自分のためでもあるのです。
二つ目は「障害年金や遺族年金がもらえない可能性がある」ということ。
障害年金は病気やケガで万一障害が残った際に受給できる年金、遺族年金は被保険者が亡くなったときに配偶者や子供に支払われる年金です。
それぞれの受給条件は以下の通りになります。
●障害年金
障害の原因となる傷病の初診日が国民年金保険(または厚生年金保険)の加入期間中であり、かつ加入期間の3分の2以上の保険料が納付あるいは免除されていること。加えて、直近1年間に保険料の未納がないこと。
●遺族年金
被保険者が死亡した時点で、国民年金への加入期間である3分の2以上の保険料が納付あるいは免除されていること。
※R8(2026)年4月1日までは上記に加えて、死亡の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと。
以上の受給条件を踏まえて考えると、国民年金保険に加入し保険料を納めていなければ、障害年金や遺族年金も受給できないということになります。
いつ誰がどうなってしまうか分からないからこそ、国民年金に加入し、万一に備えておく必要があるのです。
20歳になったら保険料を払える・払えないに関わらず、加入手続きをすることが大切です。
支払いが不可能な場合は、国民年金の加入手続きとともに学生納付特例制度の申請も併せて行いましょう。
コロナで暇な大学生活を有意義に過ごす方法とは!自粛期間を楽しもう
海外留学や休学・留年をした場合はどうなるの?
学生納付特例制度は、
大学、大学院、短期大学、高等学校、高等専門学校、特別支援学校、専修学校及び各種学校(修業年限が1年以上の課程に在学中の方に限る)、一部海外大学の日本分校、夜間・定時制課程、通信制課程の学生
など、ほとんどの学生が対象となります。
休学中の方でも学生の身分が継続していれば申請が可能です(留年も同様)。
留学の場合は、任意で加入したうえで納付した場合、障害基礎年金は支給されます。
海外在住期間は受給資格期間としてみなされますが、年金額としては反映されません。
学生納付特例制度の利用もできないため、任意加入しない場合には注意が必要です。
「学生納付特例制度」に申請する方法
学生納付特例制度の申請方法は、必要書類を用意し対応窓口に提出するというシンプルな流れ。
申請書類は日本年金機構のホームページからダウンロードできます。
申請時に必要な書類
申請時に必要な書類は、「申請書類」と「添付書類」の大きく分けて2種類です。
申請書類は日本年金機構のホームページからダウンロードできます。添付書類は以下の通りです。
●必要添付書類
<必ず必要な書類>
- 年金手帳または基礎年金番号通知書
- 学生であること、学生であったことを証明できる書類(在学期間が分かる在学証明書(原本)または学生証(裏面に有効期限、学年、入学年月日の記載がある場合は裏面も)の写し)
※ただし、国民年金法施行規則第77条の6第1号「学校教育法第134条第1項に規定する各種学校」(修業年限が1年以上である場合に限る)にあたる場合は、修業年限が1年以上であることを証明できる書類
(在学証明書などで証明できる場合は必要ありません)
申請手続きを行う際、市区町村役場の窓口で直接これらを提示する場合は添付の必要がありません。
不安な方は事前に担当窓口に問い合わせすることをおすすめします。
<場合によって必要な書類>
退職(または失業)者が申請を行う場合は退職(失業)したことを証明できる書類
※雇用保険受給者証、雇用保険被保険者離職票などの写し
申請書類を提出する窓口
申請は以下のいずれかの場所で行うことができます。
- 住民登録をしている市(区)役所・町村役場の国民年金担当窓口
- 年金事務所
- 在学している学校(学生納付特例制度の代行事務を行う許認可を受けている学校のみ)
申請書は郵送での提出も可能です。
その場合は必要添付書類とともに、住民票登録をしている市(区)役所・町村役場へ郵送しましょう。
【日本年金機構ホームページ(国民年金保険料の学生納付特例制度)】
親が子どもの国民年金保険料を支払うと節税になる
子どもが学生の間、国民年金保険料を親が立て替えて支払うという選択もひとつです。
この場合のメリットは、節税になるということ。
子どもの保険料を親が支払うことで、親の所得控除とすることが可能になります。
子どもより収入が高い(=所得税率が高い)親が支払うことにより、社会保険料控除で戻ってくる税金が多くなり、結果として節税につながるというわけです。
また、前納(まとめて前払い)することで保険料が安くなります。
例えば、令和3年度の口座振替2年前納した場合の割引額は15,850円。年度によって多少の増減はあるものの、毎年15,000円程度を節約することができます。
学生も保険料の支払い義務はある!特例制度を利用しよう
いかがでしたでしょうか?
最後に、学生納付特例制度の3つのポイントをまとめておきます。
- 学生納付特例制度は保険料の免除ではなく“猶予”。猶予された保険料は追納する必要がある。
- 追納しない場合、将来受給できる老齢基礎年金が減額に。
- 追納は申請が承認された月の前10年以内であれば可能。3年度目以降に追納した場合は、保険料に加算料が上乗せされる。
学生も20歳を超えれば保険料の支払い義務が発生します。利用できる制度を上手に活用して、将来の自分のために今から準備を始めませんか?