有限な時間を自由に使える大学生のうちから、就活や今後のことを見据えて資格取得に励む学生は多くいます。
現代において
- 就活を有利に進められる資格は「××」というものを持っておくといい
- 「○○」という資格は持っていても、優位性が発揮されない
- 資格取得よりも別のことに着手すべきだ
などの謳い文句が飛び交っています。
その中には「簿記」という資格を持っておくといいと文言あります。
実際に「簿記」を取得しておくと、どれくらい就職活動を有利に進められるか考えたことがありますか?
そこで今回は、「簿記」を大学生のうちから取得しておく理由と併せて、就活における「簿記」の優位性、取得するならこのスケジュールでやるべきというのをご紹介します。
大学生のうちに「簿記」を取得しておく理由
低コストで受験できる
まず「簿記」の取得にかかる費用は、就活を有利に進められる他の資格よりも「低コスト」で受験することができます。
多くの大学生が「簿記3級」取得目指して独学で学習を始めます。その時にかかる費用は主に「テキスト代」、「問題集」、「電卓」、「過去問題集」、そして「受験料」を要します。これらすべてをまとめたとしても、約1万円かかるかかからないかです。
また独学に必要とされる時間目安は、約100時間前後とされています。
たとえば1日約2時間の勉強時間を設けたとしても、そこから約2ヶ月以内には3級取得に向けた準備が整っているといってもいいでしょう。
就職先の財務諸表の分析が多少ながらできる
簿記資格の取得に向けて勉強を進めていく過程で、3級レベルでも人によっては企業の「財務諸表」の分析ができるレベルまで自分を高めることができます。
いいところに就職が叶ったとしても、経営状況が悪化して財政難になってしまえばなんとために就活を頑張ったのかが報われません。
「簿記3級」を取得して、それを就活に活かそうというのであれば財務諸表がある程度分析できるレベルにまで持っておくといいでしょう。
結果として財政危機にある企業を避けることにつながります。
ほぼすべての職業で培った知識を活かすことができる
「簿記」資格取得で培った知識は主に経理や財務、金融関係の仕事が発揮されることが多いというイメージを持っている方が多いですが、実をいうとそれ以外の仕事でも大きな力を発揮します。
たとえば「営業」です。
「営業」は会社に利益を生み出すことを生業としています。もちろん企業や消費者相手に自社製品・サービスを売ればいいというわけではありません。売れるためにはどうすればいいのかという「試行錯誤」を凝らし、さらに製品にかかるコストを考慮していかなければ、最悪赤字を招く結果となります。
つまりは、「簿記」取得の勉強を進めていく中で、営業効率を考え出す力を身に着けることができます。
「簿記」資格の勉強を進めていけば、自然と数字に強くなっていきます。数字は物事の結果を視覚的に証明するのに最適なものであり、説得力を持っています。
言うなれば「数字」を武器として説得力のある施策提案を、あらゆる土俵の場で出すことができます。その土俵は今あるほぼすべての職業に通じます。
そもそも簿記資格とは
簿記資格の基本情報
ここで一度改めて「簿記」という資格についてご紹介します。
【概要】
「簿記」とは、会社の営業取引状況や経営活動の記録を帳簿に記録する「技術」のことを言います。
その技術に関する資格を「日商簿記」といい、正式名称は「日本商工会議所及び各地商工会議所主催簿記検定試験」となっています。
職歴書に記入する際は、あまりにも長すぎるため「日商簿記検定試験」もしくは「日本商工会議所主催簿記検定試験」と記入します。
【知識が活躍する場面】
「簿記」資格取得に向けて勉強をして得た知識は主に「借用対照表」「損益決算表」などを作成するときに役に立ちます。
まず「借用対照表」とは、会社の財政状況をまとめたものです。主に会社資産、負債、会社資本がどれくらいあるのかを記録しています。
次に「損益決算表」とは、会計期間中に使用した金額、事業を通して儲けた金額を記録したものです。
それぞれの表を月別で分析すれば、今この会社の経営状況が好転しているのかそれとも悪化の一途をたどっているのかがわかります。
取得のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
|
|
とされています。
【メリット】
決算表が読めるようになる
「簿記」資格取得を目指して勉強を進めていく中で、表の読み書きから基礎的な知識を得るにつれて自然と数字に強くなっていきます。
その結果として企業の「決算表」といった「借用対照表」「損益決算表」を分析する力が養われます。
この力が身につけば、会社の経営状況が今どんな状態にあって、今後どのような結果を招くのかを分析することができます。
それは経理や会計士として仕事をすることと同時に、就活時期にも役に立ちます。
就職以外の場面でも役に立つ
「簿記」で培った学習内容は、就職前後以外の場面でも役に立ちます。
それが「起業」です。
学生の中には、学生起業を実現させたい方や将来的に起業をしたいと考えている学生がいます。
そんな学生にこそ「簿記」資格の取得を目指してほしいところです。
当然ながら「簿記ができれば、起業もうまくいく」という保証はありません。
しかし、起業するとなれば最初のうちは自分1人で会社をきりもみしていかなければなりません。そうなると必然的に「簿記」の知識が必須といえます。
もし起業をするならば
- 自社と同業他社の経営状況・財政状況を正確に分析、把握できること
といった知識を起業前までに身に着けておくといいでしょう。
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【デメリット】
低コストでもお金と時間がかかる
「簿記」取得は確かに低コストで済みます。しかし、それは「独学」で学習を進めた場に限ります。
学習方法には独学の他に「簿記講座」を取り扱っているスクールに通うことで額雌雄を進めていく方法もあります。
また「簿記2級」までを目標にすると少なくとも2万以上の出費を伴います。
たった2万と言いますが、学生にとってはその2万円は大きな出費です。
「自己成長の為」と思って出費するならば問題はありません。ただし趣味や生活のためにこの額を使いたいとためらいがあるのであれば、おすすめはしません。
また、取得には勉強する時間を確保するのも必要です。
3級までならば約100時間前後確保すれば申し分はないとされています。しかし、2級ともなればその3倍近くの勉強時間を必要とします。
自由に使える時間があるとは言え、その大半を「簿記」取得に使用するのは非常にもったいないといえます。
人によっては理解しにくい側面を持っている
「簿記」とは、会社間あるいは消費者との取引を経て発生した利益・損益などを「勘定科目」と「金額」に置き換えて表に記録するものです。
つまりはお金の流れ、その仕組み、俗にいう「ビジネス」に対する理解がないと、「簿記」はただの数字遊びにしか見えないということです。
言うなれば「ビジネス」の経験が乏しい学生にとっては理解しにくい場合があるといえます。
ただし、アルバイトやインターンで「ビジネス」とは何なのかを理解した、あるいは触れたことがある学生であれば、「簿記」の学習が捗るでしょう。
簿記資格の有利性
大手企業では簿記3級は通じない
低コストで取得ができる「簿記3級」を持っていれば、就活を有利に進められると言いますが、それはあくまで「中堅・中小企業」「ベンチャー企業」に限った話です。
大手企業ともなれば最低でも「2級」からが評価されるでしょう。
ではなぜ大手では「簿記3級」では、就活を有利に進められないのか、その理由をご紹介します。
ガクチカで答えるには弱い
まずは「ガクチカに答えられるほど強力な資格じゃない」ことです。
「ガクチカ」は、就活における定番の質問です。質問に対する意図は「学生時代にどのように取り組んで問題解決に努めたか」という「人間性」を見ています。
答え方としては「こういう問題に対して、こういう切り口を持って解決へと導いた」というのが模範的です。
これが「国家資格」の場合では「合格するために、アレコレこういう工夫を自分なりに凝らして取得ができた」という答え方ができます。
「簿記でも同じことが言える」と思いがちですが、「簿記3級」の平均合格率は約40%~50%ですので難易度的にもそう高くはないと判断されます。
よって「ガクチカで答えるには弱い」ということです。
大手ともなれば簿記の知識レベルは2級以上
2つの理由は「大手で必要する簿記の知識レベルは2級以上」という点です。
「大手」ともなれば、株式を発行して資金調達を行っている企業が対多数を占めています。この「株式」に関する知識は、「簿記2級」を取得する過程で得られます。
以上が大手では「簿記3級」が通じない理由でした。
ここで勘違いしてほしくないのが「簿記」資格そのものが就活を有利に進められないということです。ここで紹介したのは、大手では「簿記3級」が通じないという点です。
もちろん3級取得そのものが無駄ではありません。その先の2級、1級へとステップアップするために取得をした第一歩です。
もし3級取得で満足をしているようであるならば、それはそれでもったいないといえます。
将来は「大手に就く」ことを志しているのであれば、学生のうち3級取得で満足するのではなく、2級取得を目指してみましょう。
学生のうちに取得するなら2級まで
大手をはじめ将来的には経理や財務関係の仕事をしたいと考えている学生は、「簿記2級」の取得を目指すことをおすすめします。
理由は、2級レベルからの知識が、経理や財務で仕事をしていく上で必要不可欠な知識だからです。
また金融機関や会計事務所などお金が目まぐるしい勢いで動く業界で仕事をしたい場合も2級まで取得しておくことをおすすめします。
また、就職先に「外資系」となれば、簿記2級取得よりも「英語学習」を優先すべきです。
理由は「簿記」は入社した後でも、学習時間を確保できれば取得できます。一方「英語学習」は小中高で基礎・応用ができているとは言え、ビジネスの現場で通用することはありません。
ではどれほどの英語力が外資系では求められるかというと、「TOEIC」のA~Bランク以上あれば通用するレベルとされています。
ここまでの話しを総括して「なぜ学生のうちに取得するなら2級まで」と言われているのか。それには理由があります。
「簿記1級」は経理のプロとして活躍できるレベルであり合格難易度も10%前後とされているほどの狭き門です。
また学習にかかるコストを考えると、2級取得までが打倒のレベルといえますし、無理して1級取得に向けて学習をするよりも他のことに時間を費やした方が合理的といえます。ついては2級取得でも気企業側から、十分な評価を得ています。
簿記資格の取得が役立つ職業
商社
ほぼすべての職種・業界企業の部署には、会社の経営状況を把握している「経理部署」があります。
会社の規模を問わず「経理ができる人材」を欲する企業はそこらかしこにあります。
その中でも「商社」は、「簿記」で培った知識を存分に発揮できる仕事です。
また「経理」に限らず、「営業部署」でも、簿記の力を発揮することができます。
金融機関
次に「金融機関」です。
「金融機関」と言えば、都市銀から地方銀、信用金庫などの民間金融機関が挙げられますが、どこに所属したとしても「簿記」の知識を必要とします。
さらに、金融機関への就職を目指している学生は多く存在します。
周りとの差をつける意味でも、「簿記2級」の取得は最低限満たしておくことです。また力があれば、合格率10%の「簿記1級」を目指してみましょう。
コンサルティング
次に「コンサルティング」です。
一言で「コンサルティング」と言って、取り扱う商材は多岐に渡ります。
とはいえ、商談をする相手にとってどのような工夫を凝らせば、会社にとって利益となるかを「数字」を用いて説明していきます。
アドバイスをする側は基本的に「お金に関する知識がない」ことが多いです。その相手から如何にして信用を得られるか、納得のいく提案ができるかがかかっています。
簿記取得までのスケジュール
スケジュール
「簿記」資格取得を目指すならば、最低でも大学3年生の11月をラインとしたスケジュールを組むのがベストです。
たとえば、3級取得を目指すのであれば1日最低でも1時間~2時間前後は勉強時間を設けておくといいでしょう。取り掛かりの時期としては大学1、2年生のうちに取得できるようにするのがベストです。
また3級取得後すぐに2級取得を目指す場合も同様のこと言えますが2級からの取得難易度はグンッと跳ね上がります。
また2級取得時にかかる時間は3級取得に要した時間の約3~4倍もの時間を要します。
この点を踏まえてスケジュールを組むといいでしょう。
試験時期
次に「日商簿記検定」の試験時期です。
時期は毎年6月、11月、2月の計3回行われます。
本腰を入れた就職活動に合わせて少なくとも大学3年生の6月か11月までには取得をすべきといえます。
また就活時期が近づいてくると、自己分析や自己PR、エントリーシートの作成などやるべきことが増えていきますので注意しましょう。
まとめ
以上が、大学生が「簿記」を取っておく理由と就活を有利に進められるかの真偽でした。
「簿記3級」取得で就活が有利になるといいますが、それは大きな間違いです。真の意味で評価され有利に進めることができるの、2級からとされています。
「簿記3級」はあくまで2級、1級へとステップアップするための足掛かりにすぎません。取得を目指すならば最低でも2級所得を兼ねているといいでしょう。
また「簿記」は一生涯有効利用できる資格でもあります。
就活で有効利用できなくとも、取得するメリットは大いにあります。