一度内定をもらっているのにも関わらず、企業から突然内定取り消しになるケースがあります。
そもそも内定は簡単に取り消せるものではありませんが、経歴詐称などがあれば企業は内定者に対して取り消しができます。
ほかにも、内定取り消しになるケースはいくつかあります。
そこで今回は、内定取り消しになるケースや対処法、取り消されないための注意点などについて詳しく解説してきます。
これから就活を始める方や、「内定取り消しにならないためにはどうすればいいの?」といった方はぜひ参考にしてみて下さいね。
「内定取り消し」とは?
内定取り消しとは、企業が一度出した内定に対して入社日前に取り消すことを指します。
一般的に企業は、就活生に向けて「〇月〇日から働いてください」といった内容を記したものと誓約書が掲載された内定通知を送ります。
しかし何らかの原因によって一度結んだ労働契約を破棄するケースもあります。
内定取り消し自体は原則、合法的に可能であるといわれており、事実上、解雇にあたります。
ただし解雇は、いつでもおこなえるものではありません。
解雇は労働契約法といった法律に基づいて初めて実行できるものであり、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」といった定義があります。
つまり、上記の合理的な理由がなければ内定取り消しはできないということですね。
内定取り消しになる6つのケース
先にも述べたように、内定取り消しは客観的かつ合理的な理由がなければ実行できません。
ここでは、具体的に内定取り消しになるケースについていくつかご紹介します。
- 内定後の妊娠発覚
- 学校を卒業できなかった
- 経歴詐称
- 病気やケガによって業務に支障が出る
- 犯罪歴の隠蔽や内定後の逮捕
- 会社都合の「整理解雇」
➀内定後の妊娠発覚
とくに女性の場合なのですが、内定後に妊娠が発覚した際は内定取り消しになってしまう可能性が高いです。
なぜなら、妊娠や出産は身体的な負担が大きく、長期的に休まなければいけない状況になるためどうしても業務への影響が大きくなってしまうためです。
さらに出産後すぐに復帰できるといったケースがかなり低く、1年以上などは育児のために休職しなければいけません。
企業側としてはせっかく内定を出して戦力として使いたいと思っているのに、1年以内に休職となるのはかなりの痛手となります。
とくに研修や仕事内容上、身体を駆使するものであれば仕事に支障をきたすため、最低でも1年以上働いてから産休・育休を使うようにするなどライフプランを考えることも大事です。
②学校を卒業できなかった
中途採用ではなく新卒採用で就職するのであれば、内定者が学校を卒業できなかったことが原因で内定取り消しになるパターンもあります。
そもそも内定の条件には、学校を卒業すること自体が含まれるためです。
なかには中退しても入社できることもありますが、基本的には学校を卒業してから入社するのが一般的です。
内定したのに結局卒業できなかったとなれば、企業との信頼関係も損なわれますし、「学力や能力が足りないのでは?」といったマイナスイメージにもつながります。
したがって、内定が出始める6月から9月あたりは自分が本当に卒業できそうかどうか、残りの単位数や取得すべき単位などを事前に確認しておくことをおすすめします。
③経歴詐称
内定者の深刻に経歴詐称などがあり発覚した場合、内定取り消しになります。
なかでもとくに大学生の場合だと、学歴詐称などが挙げられます。
ほかにも、専門的な仕事に就く上で「入社までに取得しなければいけない資格を取っていなかった」「外国語を使う企業でTOEICや英検などの点数を偽っていた」などもあります。
申告の虚偽は詐欺行為としてみなされるため、信頼関係だけではなくそもそも内定がなかったことにされてしまうので要注意。
資格があるからスキルがあるからといった理由で内定を出している企業にとっては、その実力がない就活生は必要ないとみなされるのです。
内定したいからといっても、虚偽の申告は絶対に辞めておきましょう。
④病気やケガによって業務に支障が出る
先にも紹介した妊娠のほかにも、業務に支障が出るレベルの内定者の病気やケガなども内定取り消しにつながるため注意しなければいけません。
企業は入社日に合わせて研修や仕事内容をあらかじめ考えているので、病気やケガによって仕事ができないのであれば意味がないからです。
人員増員のために雇った人がひとりでもいないとなれば、ほかの社員への負担も大きくなりますし、研修スケジュールや進捗なども大幅な変更が必要となります。
ただし、病気やケガによって数日程度休まなければいけないといったケースなら内定取り消しにはなりにくく、取り消されるのには程度や回復までの期間などが関係しているといえます。
いずれにせよ、入社までは病気やケガにならないよう体調面には気を付けて生活することが大事です。
⑤犯罪歴の隠蔽や内定後の逮捕
学歴詐称などのほかに、犯罪歴などの隠蔽や内定後の逮捕も内定取り消しになります。
犯罪の大小にかかわらず、犯罪歴の隠蔽は非常に悪質であり、雇っている企業にとっても社会的な信頼が失われる原因になるからです。
また内定後に内定者が刑事事件などを起こしたり、SNSなどで問題発言をして炎上した際も企業のイメージダウンにつながるとみて取り消されたりもします。
とくに最近では、SNSによる投稿などで内定取り消しになるケースは増えてきているので、慎重な発言をするように意識しましょう。
⑥会社都合の「整理解雇」
これまでは内定者都合による内定取り消しのケースについてご紹介してきましたが、会社都合によって内定が取り消されることもあります。
会社都合の場合、「整理解雇」に当たるかどうかが大きなポイントとなります。
整理解雇とは簡単に言えば、不況や経営不振などによって人員を解雇することをあらわします。
整理解雇の場合、企業側が内定者を受け入れられない正当な理由があるとみて合法的に内定を取り消せます。
ただし、整理解雇はそうそう簡単に判断できるものではなく、以下の4つの条件に当てはまっていなければ認められません。
- 人員削減の必要性がある…現在の人員では経営難となるケース。経営不振を示すために、具体的な数値や資料の開示が必要となる。
- 解雇回避の努力をしたかどうか…整理解雇が必要な状況でも、労働者を継続的に雇う努力を企業側がしたかどうか。たとえば、「希望退職者を募る」「残業など働き方を見直した」「ほかの社員の賞与や報酬カット」などがあたる
- 解雇する人材に合理的な理由がある…整理解雇の対象者が合理的な理由に基づいているかどうか。たとえば、勤務地や貢献度、年齢、これまでの実績など。
- 解雇手続きが妥当であるか…整理解雇対象者や労働組合に対して企業が、適切なタイミングや理由などについて説明しているかどうか。さらに、再就職先へのサポートなどをおこなっているかなどを見られる。
内定取り消しが不当になるケースもある
先にも述べたように、会社都合による内定取り消しの場合はいくつかの条件が必要となります。
反対に、会社が内定取り消しだといっても不当になるケースもあります。
そこでここでは、会社都合によって内定取り消しが不当になる事例についてご紹介します。
➀赤字が常態化しているのに内定を出した
内定後に経営不振に陥り企業側が努力したのなら内定を取り消すことはありますが、赤字が常態化しているのに募集をかけ内定を出したとなれば話は別です。
赤字のための改善や対策を取らない、もしくは克服が困難とみなした上での内定取り消しは正当性に欠け、内定者には一切の問題もないからです。
希望であれば内定取り消しを争うこともできますが、赤字が続いているような会社はいつ倒産してもおかしくないので将来性に欠けるといえます。
もし内定取り消しを争うのであれば、慎重に見極めるようにしてください。
②やっぱり社風に合わないと判断した
企業が一旦内定を通知したのにもかかわらず、「やっぱり内定者が企業の社風に合わないと判断し取り消した」といったケースは過去に裁判で争われており、実際内定取り消しが認められていません。
社風に合わないといった理由のみでは正当性や合理性に欠けますし、社風に合わないのであれば選考の時点で判断できるからです。
もし同じような理由だったり、内定取り消しの理由が明らかではないのであれば、思い切って裁判を起こすのもひとつです。
内定取り消しをした企業側の3つのリスク
内定を取り消した場合、企業側にとってもリスクがあります。
おもに内定を取り消した企業側のリスクには以下のものが挙げられます。
- 内定者から訴訟を起こされる
- 企業そのもののイメージが下がる
- 厚生労働省によって社名を公表される
➀内定者から訴訟を起こされる
内定取り消しをおこなった場合、企業はまず内定者から訴訟を起こされる解いたリスクが生じます。
内定とはそもそも双方の合意によって一度成立した契約なので、一方的な企業側の内定取り消しは訴訟問題に発展する可能性が高いです。
実際に、慰謝料や損害賠償を企業が請求されたといったケースもあるといわれています。
また内定を取り消す際は必ず内定者に対して、正当な理由があることなどをきちんと説明し納得してもらわなければいけません。
さらに就活生は内定したことで就職先を失ってしまうので、企業側は次の就職先へのサポートなどをおこなうなど誠意を見せる責任があります。
もしそこで「一切何の説明もされていない」「政党ではない不当な理由で働く場所を失った」「就職先のサポートがない」といった場合、企業としての信用度を下げることにもつながります。
②企業そのもののイメージが下がる
内定取り消しを実施した企業は、企業そのもののイメージが下がるといったデメリットがあります。
最近ではSNSの普及によって、内定を取り消された人が企業名などを公表するケースも少なくありません。
そうすると、「〇〇という企業は内定を取り消す企業である」といったイメージが社会に伝わるので、次回以降の応募数や現在働いている社員からの信頼も失います。
最悪の場合、社員が退職してしまうこともあるので、企業側はかなり慎重におこなわなければいけません。
③厚生労働省によって社名を公表される
内定を取り消した企業は、場合によっては厚生労働省によって社名を公表されることがあります。
先にも述べたように内定の取り消し自体は違法ではありませんが、あまりにも会社側の都合で不当に内定を取り消していると厚生労働省のサイトで企業名が掲載されてしまうのです。
おもに以下の条件の場合、厚生労働省のサイトに掲載されるといわれています。
- 2年連続で内定を取り消している
- 同じ年度で一度に10人以上の内定取り消しをおこなっている
- 行政気が良好であるにも関わらず内定取り消しをおこなっている
- 内定を取り消した正当な理由をきちんと説明していない
- 内定取り消し後に今後の就職支援サポートなどがない
厚生労働省のサイトに一度掲載されてしまうと、今後の応募者の減少や人材の流出などにつながるおそれもあるので企業側も注意しなければいけません。
内定を取り消された際の対処法4つ
もし、いきなり内定を取り消されたときはどのように対処すればいいのでしょうか?
内定を取り消された際はやはり焦ってしまいますので、万が一のために対処法を知っておくだけでも安心です。
これから就活を始める方や内定が決まった人はぜひ参考にしてみて下さいね。
- 企業に理由を確認してみる
- 弁護士を立てて交渉する
- 都道府県労働局に相談する
- ほかの企業を探す
➀企業に理由を確認してみる
内定取り消しの連絡が合ったら、まずはなぜ内定を取り消されたのかの理由を企業に問い合わせてみましょう。
もし電話で内定取り消しの連絡を受けたのであれば、なるべくメールや書面などを必ず形に残る状態で作成してもらってください。
内定取り消しの経緯や理由について形にしておくことで、万が一の際でも証拠として提出できるからです。
やはり口頭のみだと、「言った」「言わない」のトラブルに発展する可能性もあるので、トラブル回避にもつながります。
実際、内定者が希望すれば、会社は内定取り消しをする際に解雇事由証明書を交付しなければいけないといった決まりがあります。
もしそこで頑なに証明してもらえないのであれば、「違法行為」だとみなされることも。
内定取り消しとなるとつい焦ってしまいますが、冷静に対処することが何よりも大事です。
②弁護士を立てて交渉する
もし内定を取り消された理由があいまいだったり、整理解雇に当たらないのではと疑う場合は弁護士を立てて交渉するのもひとつです。
やはり学生なので個人で企業と交渉するのは非常にハードルが高く、弁護士を介した方が全体的な手続きもスムーズに済みます。
また企業側が内定取り消しの条件に対して理解が浅いといったこともありますからね。
労働審判の場合だとおおよそ3ヶ月程度、訴訟など長期化するのであれば約1~2年程度かかるとされています。
違法だということが証明できれば、内定の取り消しが無効となったり、損害賠償請求が認められることもあります。
無料相談ができる弁護士もいるので、まずは相談してみるといいでしょう。
③都道府県労働局に相談する
内定取り消しが不当だと感じた場合、弁護士ではなく都道府県労働局に相談してみるといった手もひとつです。
内定など労働に関する相談なら、全国に複数カ所設置されている「総合労働相談コーナー」といった機関にまず相談するといいでしょう。
「内定取り消しをされたけど、何から始めたらいいかわからない」といった方がほとんどだと思うので、しかるべき機関に相談すれば有益なアドバイスをもらえるはずです。
必要に応じて弁護士や社会保険労務士などの専門家も紹介してくれるケースもあるため、まずは都道府県労働局にと言わせてみて下さい。
④ほかの企業を探す
入社までに時間がある、もしくはまだ就活を続ける意思があるのなら思い切ってほかの企業を探すのもひとつです。
やはり内定取り消しに関わる交渉や訴訟まで行くと時間もお金もかかりますし、身体的・精神的な負担もはかり知れません。
そもそも正当な理由がないのに内定を取り消してくるような企業だと、経営不振など将来性に欠けるといった可能性もあります。
また、企業側の都合による内定取り消しであれば、就活の際でも問題なく伝えられます。
就活エージェントを利用すれば、早期内定もまだできるのでぜひ利用してみるといいでしょう。
【2023年最新版】24卒におすすめの就活エージェント11選!利用時の注意点も徹底解説
内定を取り消しを回避するための注意点4つ
内定をもらったにもかかわらず油断し、自らの軽率な行動で内定を取り消されるケースは実は少なくありません。
そこで最後に、内定を取り消しを回避するための注意点についてご紹介します。
内定を取り消される理由が自分都合とならないよう、以下の点に気を付けて過ごすようにしてください。
- 虚偽のない申告をする
- 卒業に必要な単位を取得する
- 体調管理を徹底する
- SNSでの軽率な発言、行動に気を付ける
➀虚偽のない申告をする
内定取り消しを防ぐためにはまず、虚偽のない申告をすることが何よりも大事です。
面接や書類選考の時点では通用したとしても、虚偽は必ずばれてしまいます。
就活生の中には「この程度ならバレない」「これくらいなら盛ってもいいだろう」と軽視する人も少なくありません。
とくに、学歴やTOEICなど業務に直結するような資格やスキルの欄には要注意。
申告の虚偽は犯罪行為とも捉えられますし、信頼関係を及ぼします。
さらに、申告を偽ってしまうと入社後のミスマッチにもつながり、自分自身にも影響します。
就活において職歴や経歴などをごまかすのはNGです。
自分で信頼をおとさないようにするためにも、必ず正しい情報を掲載するようにしましょう。
②卒業に必要な単位を取得する
先にも述べたように、そもそも学校を卒業できなければ内定取り消しにつながります。
内定をもらえたらつい油断してしまいがちですが、必要な単位を計算し順当に取得できるように学業を進めておきましょう。
とくに大学4年になると、ギリギリになって「本当は取得すべき単位がまだとれていない」なんてことも実は少なくありません。
また単位数そのものに問題がなくても、卒業試験や論文があれば研究に取り組むことも大事です。
大学生のうちにできることは限られており、しっかり勉学に励めるのも今だけなので精いっぱい参加しましょう。
大学でまなんだことやゼミ活動の経験は、今後の仕事にも役立つことがあるかもしれません。
③体調管理を徹底する
内定取り消しのケースでもご紹介したように、業務に差し支えるほどの大きな病気やケガ、妊娠などは充分内定取り消しの原因になりえます。
防げないものもあるでしょうが、日頃の不摂生などは健康状態に直結するので入社までに規則だたしい生活を送れるように調節しておきましょう。
仕事が始まったら、毎日朝から夕方、夜まで基本的に決まった時間で働くことになります。
とくに夜更かしをしすぎる習慣のある方は特に要注意。
また大学生にありがちなのは、飲酒による失敗です。
一気飲みなどの急性アルコール中毒で死亡するケースもありますし、泥酔して思わぬケガやトラブルに巻き込まれることも珍しくありません。
「自分は大丈夫」とは思わず、入社までの自分自身の体調管理を徹底するようにしましょう。
④SNSでの軽率な発言、行動に気を付ける
最近ではSNSの普及によって、SNS関連のトラブルによって内定取り消しにつながることも珍しくありません。
「SNSなんてどうせ企業は見ていないでしょ」「まだ入社していないから大丈夫」といった軽率な考えで、社会的に問題のある発言や行動をとってしまうのはNGです。
そこまで考えていなくても思わぬ形で拡散されてしまうこともありますし、問題のある言動を取る社員が〇〇の会社にいるとなると、企業のマイナスイメージにもつながります。
どれだけ学歴やスキルがあったとしても、社会的信用が落ちれば元に戻すのは困難です。
一度投稿した動画や文章、写真は自分で消去できたとしても、完全に消すことはできません。
一時的な感情による投稿でせっかくの内定を白紙にさせないよう、SNSの使い方には注意するようにしてください。
内定取り消しになったら冷静に対応しよう!
今回は、内定取り消しになるケースや対処法、取り消されないための注意点などについて詳しく解説してきました。
内定の取り消しは解雇と同様の扱いにあるので、基本的に頻繁におこなわれるものではありません。
しかしなかには、企業の経営不振や内定者の不用意な行動によって内定が取り消しになるケースもあり得ます。
もし万が一、内定取り消しになったとしても冷静に対応することが何よりも重要です。
まずは内定が取り消しになった理由について会社に問い合わせてみる、必要であれば弁護士や都道府県労働局に相談してみるのも検討してみて下さい。
また、内定獲得したからといって羽目を外しすぎるのはNGです。
社会人として働くのなら、常識的なマナーや規則正しい生活を送るように意識しましょう。
とくに最近では、SNSへの投稿や問題発言などで内定取り消しになるパターンは多い傾向にあります。
今回の記事を参考に、内定取り消しになる原因を把握し、取り消されないよう慎重に過ごすように心がけてみてくださいね。