首都圏に就職して、地元に帰っても手に職がつくように…という思いで土地家屋調査士の資格を取得し、地元で独立したものの、思ったように経営がうまくいかずに悩んでいませんか?
この記事では、土地家屋調査士の資格やスキルを活かした転職先や、独立失敗からさらに転がり落ちないための転職方法について紹介します。
土地家屋調査士で開業したけれど、転職してやり直そうと考えている人は、事務所を畳む前にこの記事を読むことで、転職失敗を未然に防ぐことができます。
「廃業率が低い」は嘘!?土地家屋調査士が独立失敗する理由
事務所のランニングコストが結構な額だった
土地家屋調査士は廃業率が低いとも言われる資格ですが、実際はそうでもありません。その理由は、初期費用とランニングコストの高さにあります。
まず事務所を構えるまでに事務所の敷金礼金やAO機器を一通りそろえ、さらに図面作成のための専用ソフト、測量機器などをそろえるのに300万円ほどの初期費用がかかります。
さらにこれらのすべてがレンタルだと、月々のリース代として何十万もかかることになり、必要経費の金額がかなりかさんでしまうのです。事務所にパートや正社員でアシスタントや事務職員を雇用している場合、これに加えて人件費も追加されます。
初期費用までは何とかなっても、案件もそれほど獲得できないのに毎月リース代や消耗品費や家賃がかさんで、経営を維持するのが難しくなってしまいます。
事務所の立地を誤った
事務所を建てることを考えた際、土地の安さや家賃の安さを理由に地方の開かれていない土地に事務所を求める人も多いでしょう。
ところが、土地家屋調査士の業務内容から考えても、土地の合筆(土地をまとめる)や分筆(土地をわける)などの業務が多いのに、土地の動きが少ない場合は、案件自体が入ってこないため、収入につながりません。
特に地方の田舎で、土地開発もほとんどなく、土地の流動性がないようなところに事務所を建ててしまうと、入ってくる仕事が限られてしまいます。
たまに遺産の土地分配などで仕事が入ることがあっても、そういった仕事は地元の昔からの土地家屋調査士が請け負っている場合が多いため、新しく事務所を構えた土地家屋調査士は新規参入しにくいというのが現状です。
地元でおなじみの土地家屋調査士と渡り合うためには、行政書士や司法書士などの資格も保有しているダブルライセンス・トリプルライセンスが必須なのです。
コネを築けなかった
事務所を構え、自分自身が所長となって事務所を切り盛りするからには、安定した案件を請けるだけのコネクションが必要です。
商売として成立させるためには、いかに毎月安定した案件数を維持するかが問題であり、それを支えてくれるのが地元のつながりなのです。
また、元からコネがなかったとしても、何もないところからコネを「つくる」力も必要です。
飲み屋で知り合った人が実は地主で、そこから仕事がもらえた…ということもあります。このように、運も上手に使って案件の獲得に努めることができる人の事務所は残る傾向にあります。
しかし、土地家屋調査士としての専門性が高くとも、営業力がないがために、せっかくのチャンスをふいにしてしまったり、チャンスを見抜けない、もしくはチャンスとわかっていても踏み出せない人は、廃業に追い込まれてしまいます。
低価格という事務所の売りが自分の首を絞めた
地元に根付いた大事務所に対抗しようとして裏目に出る
自分が開業した土地家屋調査士事務所のある地域に、老舗で世襲のように何代にもわたって一族が経営している地元に根付いた大きな事務所があった場合、対抗する手段は限られてきます。
第一勢力のような事務所に新規参入事務所が立ち向かうためには、価格を下げて敷居を下げ、とにかく顧客の確保に励もうとする人が多いものです。
しかし、元々土地家屋調査士の仕事はスピード勝負が性に合わない仕事でもあります。法律にきちんと向き合い、後々新しい裁判沙汰にならないよう、慎重に1件1件取り掛かるのが理想的です。
ところが、価格を下げてしまうと仕事を早く終わらせないと採算が合わず、結果として信用されない仕事ぶりになり、評判が評判をよんで結局顧客獲得に至らず、事務所を畳むことになってしまいます。
仕事は増えてないのに、土地家屋調査士事務所は増えて価格の差別化が裏目に出る
日本土地家屋調査士会連合会の調査によると、調査が開始された平成17年には登録法人数が37法人だったのに対し、10年後の平成27年には213法人と激増しています。
一方、土地家屋調査士の個人の登録数は調査が開始された平成17には18,462名だったのに対し、平成27年には17,017名に減少していることから、土地家屋調査士を目指す人は減少しているものの、法人化して事務所を構える人は増加していることがわかります。
しかし、国土交通省の調査によると、日本の人口は既に減少傾向にあり、世帯数も2020年以降減少を続けていくという予想が立てられています。
新築戸数も減少し、世帯数が減少すれば、自然と土地家屋調査士に相談が舞い込む件数も減少していくことが予測されます。
そうなると、増えていく一方の土地家屋調査士事務所で、減少しつつある案件を奪い合うことになります。これに対抗しようとライバル事務所との差別化を図ろうと低価格にしてしまうと、結局利益を犠牲にしてしまい、自分の首を絞める結果になってしまうのです。
土地家屋調査士で独立失敗した人におすすめの再就職先
資格をそのまま活かすなら法人事務所がおすすめ
司法書士などと一緒に合同事務所を構える
せっかく取得した土地家屋調査士の資格を活かして転職する場合は、合同事務所を経営するという方法があります。
土地家屋調査士単独で事務所を経営するのは、間口が狭く、案件が入りにくいものです。
かといって、限られた時間の中で、司法書士や中小企業診断士などの他の士業の資格を取得して、今からダブルライセンス・トリプルライセンスを目指すには時間にもお金にも余裕がないという人が多いでしょう。
このような場合、司法書士などと一緒に合同事務所を経営するのが効率的です。
調査士法人として各専門業務に強いオールマイティ事務所を構える
調査士法人とは、複数の土地家屋調査士が共同で設立した法人のことです。元々土地家屋調査士は、測量や法的知識など、幅広い専門分野があり、1人きりでその幅広い分野をカバーしながら営業も自分で行うというハードワークです。
そのため、各分野に精通した土地家屋調査士が集まって、全方向に強い土地家屋調査士法人を構えることで、幅広い依頼内容に対応でき、業務負担を分散できるというメリットがあります。
土地家屋調査士資格は建設コンサルタント企業にもってこい
土地家屋調査士の業務内容は、現場での測量業務というフィールドワークや、図面作成ソフトを用いた図面製作、書類作成などのデスクワーク、法務局での調査業務などさまざまな業務をこなす仕事です。
だからこそ、このような多岐にわたる業務内容のうちの一部を活かして転職することができます。
たとえば測量会社は、土地家屋調査士事務所という名目で登録されているケースも多く、土地家屋調査士の転職先にも適しています。
また、法的知識を活かして、建設コンサルタントの企業に転職するという方法もあります。官公庁の発注する仕事を請ける際に、土地家屋調査士の法的知識が活用できるため、積極的に雇用しています。
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独立失敗からさらに転がり落ちていかないための転職方法
転職先を考える際、土地家屋調査士として開業独立で失敗したことが転職においてマイナスイメージになることは必ず避けたいものです。そのためには、以前の職場と横のつながりがある職場を避ける必要性があります。
ところが、自分だけでは転職先を探す、情報を仕入れるのには限界があり、転職してみたら実は以前の取引先や関連会社だった…ということもあり得ます。
また、廃業後からの職探しでは失業保険の失効を気にしながらの転職活動で焦りが生じるため、効率的に転職活動を行う必要があります。
このような場合、 大手事務所とも取引がある総合型転職エージェントであれば、転職先の内部情報を効率よく収集できるのでおすすめです。
「独立で失敗した」という経歴についても、書類や面談の対策段階でキャリアコンサルタントからサポートを受けることができ、より転職成功率の高い書類作成、面接対策が可能です。
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まとめ
土地家屋調査士の資格やスキルを活かして転職するためには、事務所と関連のある企業を避け、独立失敗がマイナスイメージにつながることを防いだ上で、下記のような転職先がおすすめです。
・合同事務所や調査士法人を立ち上げてパワーアップした事務所設立
・多岐にわたる業務経験を活かして測量会社や建設コンサルタント企業に転職
独立失敗がマイナスイメージにならない志望動機の書き方や面接の受け答えの方法について、転職エージェントを利用することで応募書類の添削や模擬面接によって対策可能です。
また、企業の内部事情を知るキャリアアドバイザーに相談すれば、以前のつながりのある企業は避けて転職できるというメリットがあります。