厚生労働省の「建設業における若年労働者確保の課題について」によると、建設業就業者のうち、29歳以下の割合は11.4%です。
日本全体で少子高齢化が進んでいるとはいえ、全産業の29歳以下の割合が16.4%であることを考えると、建設業は若者離れが進んでいる業界だと言わざるをえません。
なお同資料によると、建設業就業者のうち、55歳以上の割合は33.9%です。
55歳以上の労働者3人に対して、29歳以下の若者は1人しかいないということになります。
では、若者離れが深刻な建設業でどんな対策を取ることができるのか、詳しく見ていきましょう。
- 建設業の若者離れ対策では、長時間労働を改善し、競合他社と比較しながら給料を上げる必要がある
- そのためには、IT技術の導入による業務の効率化を進める必要がある
- 厳しい上下関係の見直しや採用広報の強化も必要
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建設業の若者離れ対策
建設業界が直面している若者離れの問題に対処するために取り組むべき対策を、以下にまとめます。
- 採用広報の強化
- IT技術の導入による業務の効率化
- 競合他社と比較して給料を上げる
- 長時間労働の改善
- テレワークの導入
- 資格取得支援制度の導入
- 若手育成の強化
- 厳しい上下関係を見直す
- 女性や多様な人材の積極採用
- 社宅や家賃補助の導入
- キャリアパスを明確にする
採用広報の強化
建設業の若者離れを防ぐためにできる対策の1つ目は、採用広報の強化です。
建設業の3K(きつい・汚い・危険)のマイナスイメージを払拭するポジティブなイメージと、自社ならではの強みを、効果的に伝えましょう。
- SNSアカウントの運用
- 企業ウェブサイトに採用ページを作る
- オンラインセミナーの実施
- 企業説明会の開催
- 職場見学 など
広報活動の際は、若者が日常的に利用するプラットフォームの活用が重要です。
現代の若者は就職活動や転職活動の際、おもにインターネットを使って情報収集しています。
自社のSNSアカウント(Instagram、Xなど)を作り、職場の雰囲気や働く人々の声を伝えましょう。
また、企業ウェブサイトに採用ページを作り、社員インタビューや仕事の一日の流れを掲載するのもおすすめです。
実際に職場で働いたらどんな日々を過ごすことになるのか、イメージしやすくなります。
加えて、若者からの質問に答える機会、実際の仕事の様子を見てもらう機会を設けることも重要です。
企業が若者と直接コミュニケーションを取ることで、求職者のニーズをより深く把握し、採用戦略に生かすことができます。
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建設業の若者離れ対策では、若い人材の採用に強い求人媒体を選ぶことも重要です。
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20代の利用者が多く、InstagramやYouTubeを通じて建設業の楽しいイメージを伝えている点が特徴です。
また、建設業界に興味を持っている若者が見ているので、応募や採用につながりやすいメリットもあります。
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IT技術の導入による業務の効率化
若い人材を確保するには、労働環境や待遇を根本的に改善する必要があります。
残業ばかりのブラック企業や、給料が低い会社には、誰であっても基本的に入りたがりません。
しかし「従業員の残業を減らしたい」「給料を上げたい」と思っても、現実的に考えて厳しい、という企業も多いです。
そこでIT技術を導入して、業務の効率化を図りましょう。
業務を効率的に進められるようになれば、従業員の待遇も改善できます。
- 休日日数を増やせる
- 残業時間が減る
- 削減できた分のコストを、従業員の給料に充てられる
建設業界で導入可能なIT技術の例
- ドローン: 測量や点検作業にドローンを使用します。従来は手間と時間がかかった作業を迅速かつ安全に実施できます。高所作業のリスク軽減にも繋がります。
- クラウドサービス: 情報共有や文書管理をクラウド上で行います。テレワークの推進にも役立ちます。
建設業界は他の業界と比較してアナログな作業が多く、ペーパーレス化が進んでいないと言われることが多いです。
他の職場から転職してきた若者に、前の職場ではどんなクラウドサービスを使っていたか聞いてみるのもいいでしょう。
中には無料もしくは低コストで導入できるものもあります。
競合他社と比較して給料を上げる
建設業の若者離れを防ぐためには、競争力のある給与体系を導入しましょう。
若者は求人サイトでさまざまな企業の求人を検索しているので、他社と比較して自社の給料水準が低いと、興味を持ってもらうことは難しいです。
同じエリアの企業や、建設業界の競合他社と比較して、低いと思われない給料を設定しましょう。
その上で、求人には先輩の給料の例やどんな基準で昇給していくのかといった内容を記載し、若者が将来の収入をイメージしやすいようにしてください。
もし自社に明確な昇給の基準がないのであれば、制度を整えることをおすすめします。
- 競争力のある報酬体系は、優秀な若者を引き寄せる鍵となります。
- また、企業が若者を大切にしている姿勢を示せるので、企業ブランドの向上にも寄与します。
建設業界の給料水準は他の業界と比較して、決して低くありません。
しかし年間の労働時間は、他の業界よりも多いです。
「割に合わない」と思われないよう配慮する必要があります。
長時間労働の改善
- 長時間労働の是正
- 週休二日制の導入 など
建設業の若者離れ対策の中でも、長時間労働の改善はとても重要です。
ご紹介してきた通り、建設業界は他の業界よりも労働時間が長く、これが建設業の若者離れの大きな原因になっています。
また建設業界は、週休2日制を導入できていない企業が多いという特徴もあります。
最近の若者はワークライフバランスを重視する傾向です。
IT技術を導入し、業務を効率化することで長時間労働を改善し、「建設業は休みが少ない」というイメージを払拭しましょう。
テレワークの導入
現代の労働市場では、柔軟な働き方へのニーズが高まっています。
特にテレワークが可能な職場は、若者から人気です。
建設業界でも、現場以外で実施可能な作業については、テレワークの導入を検討することが求められています。
- 計画
- 設計
- 事務業務 など
テレワークを導入することで、通勤時間の削減、個人の作業効率の向上、働き方の柔軟性の確保などが期待できます。
競合他社との差別化を図る上でも、テレワークの導入はおすすめです。
資格取得支援制度の導入
建設業の若者離れ対策として、会社が若者のスキルアップや資格取得を積極的に支援することが挙げられます。
特に資格取得の支援制度は、従業員にとって非常に魅力的です。
- 受験費用やテキスト代の一部または全額を、会社が負担
- 受験休暇を設ける
建設業界では専門技能が求められます。
従業員にとって資格の取得は、より高い給料を目指せるメリットがあります。
企業にとっても資格支援制度を設ければ、優秀な人材を抱えやすくなるメリットがあります。
若手育成の強化
建設業界は「仕事は見て覚える」という昔ながらの体制の企業が多いです。
しかし教育体制が整っていないと、若者が「建設業の専門的な仕事を覚えられなかったらどうしよう」と心配してしまいます。
実際に「仕事が覚えられない」「いつも怒られてしまってつらい」と感じて離職する若者は珍しくありません。
若手育成の制度を整えて、入社を躊躇する若者の不安を払拭しましょう。
- 研修を実施する
- マニュアルを用意する
- メンター制度を導入する
厳しい上下関係を見直す
建設業の若者離れ対策として、給料・労働時間・若手育成といった制度面を見直すことも重要ですが、職場の厳しい上下関係を見直すこともかなり重要です。
建設業はパワハラが当たり前、と言われてしまうことがあります。
- 職人の世界なので、指導が厳しくなることもある
- 建設現場は危険が伴うため、思わず大きな声で注意してしまう先輩がいる
- 男社会
現代の若者は、周りとの調和を重視する傾向が強いです。
仕事で怒鳴られたり厳しく指導されたりすると、多くの若者は萎縮してしまい、離職に繋がります。
ハラスメント研修を実施するなどして、昔ながらの職人気質な職場の雰囲気を改善していけるように努める必要があるでしょう。
女性や多様な人材の積極採用
建設業界の職場は、男性が中心であるというイメージが強いです。
しかし業界全体で人手不足となっている今、女性や外国人労働者など、多様なバックグラウンドを持つ若手人材の活躍の場を広げる必要があります。
- 女性用トイレや女性用更衣室といった、職場環境の整備
- 育児や介護支援制度の充実
- 性別に関わらずキャリアアップを目指せる人事制度の構築 など
多様性のある職場は、より幅広い層から応募を得られるようになります。
また多様な人材の採用を進めることで、新たなアイディアが生まれやすくなり、企業の競争力の向上につながるメリットもあります。
社宅や家賃補助の導入
社宅や家賃補助を導入すると、遠方に住んでいる若者が、自社への入社を検討しやすくなります。
「一人暮らししたいが、家賃がネック」だと感じている若手は多いです。
このような若者にも、自社に社宅や家賃補助があれば、有効なアピールができます。
特に若手は給料が少ないものなので、社宅や家賃補助はさまざまな福利厚生の中でも喜ばれやすいです。
キャリアパスを明確にする
建設業界で若者離れが進んでいる原因のひとつに、「キャリアアップが難しいのではないか」というマイナスイメージがあります。
現場作業員から管理職や専門的なスキルを持つ技術職への、キャリアパスを明確にしましょう。
たとえば求人票に、「最初は現場作業員だったが、〇年後には現場責任者になった」という先輩のキャリアアップの例を掲載します。
建設業の若者離れはなぜ起きている?
建設業で若者離れが進んでいる原因は、主に以下の2つが挙げられます。
- 給料に対して労働環境が悪い
- キャリアパスの不明確さ
給料に対して労働環境が悪い
建設業で若者離れが進んでいる大きな原因は、給料に対して労働環境が悪いことです。
「労働環境が悪い」とは、たとえば次のような要素です。
- 長時間労働
- 休日が少ない
- きつい・汚い・危険
厚生労働省は「建設業における若年労働者確保の課題について」の中で、次のように述べています。
全産業における若年労働者(男性)の「初めての正社員勤務」を離職した理由を見てみると、最も多いのは「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかったため」(31.8%)となっている(図4)。 そのような中、建設業においては労働時間が常に全産業及び製造業を上回っており、休日に関しても平成28年時点の完全週休2日制導入状況は、全産業が49.0%であるのに対し、建設業は27.4%と大きな差があるなど、他産業と比較して雇用管理面において課題がみられる(図5~6)。このような状況が高い離職率の一因になっていると推測される。
引用:厚生労働省「建設業における若年労働者確保の課題について」
建設業は、他の業界と比べて長時間労働になりやすいです。
また、週休二日制を導入していない企業がいまだに多く、土日祝日も働くことが珍しくありません。
さらに建設業は、体力的にきつい作業が多く、危険な高所作業もあります。
労働に見合った収入が得られないと思われている現実があるのです。
キャリアパスの不明確さ
「建設業はキャリアアップしづらい」と思われがちなことも、建設業で若者離れが進んでいる原因です。
- 現場作業員として入社して働き続けても、昇進や昇給に繋がりにくいのではないか
- 学歴や職歴が問われないため、誰でも入社できるイメージ
- 体力勝負なため、歳を取ったら続けられないのではないか
資格を取って給料を上げられること、管理職や上級資格を持つ職人を目指せることなどを、若者に向けて積極的にアピールする必要があります。
建設業の若者離れ対策に関するQ&A
建設業の若者離れ対策に関する、よくある質問に回答します。
- 若者が建設業を辞める本当の理由は?
- 建設業の若者離れは当たり前だと言われる理由は?
若者が建設業を辞める本当の理由は?
若者が建設業を辞める理由は、作業がきついことや、職場での人間関係です。
今の若者は学生時代から「ワークライフバランス」や「パワハラ」などの言葉を聞いてきました。
やる気がないというわけではなく、仕事に対する考え方そのものが、上の世代とは異なります。
若手の離職を防ぐには、昔のままのやり方では厳しいです。
建設業の若者離れは当たり前だと言われる理由は?
建設業の若者離れが当たり前だと言われる理由は、休日の少なさや、きつい・汚い・危険といった3Kのマイナスイメージがあることです。
肉体労働に対するネガティブなイメージの払拭や、労働環境の改善が求められます。
建設業で人材確保する方法9選!担い手確保の課題や人手不足解消の取り組みを紹介
建設業の若者離れ対策
建設業の若者離れは、業界全体にとって大きな課題です。
この課題を解決するためには、業界全体で働き方改革を進め、労働環境を改善していく必要があります。
具体的には、長時間労働の是正、休日増加、賃金引き上げ、キャリアパスの明確化、IT化の推進などです。
政府も建設業の若者離れ対策に力を入れており、これらの取り組みによって、若者にとって魅力的な業界になることが期待されます。