仕事に行きたくないという日は誰にでもあります。しかし、涙が出る、気持ちが悪くなるなど身体の不調を伴う場合は鬱病の可能性もあります。この記事では、「仕事に行きたくない」気持ちが鬱病のサインか見分ける方法や、鬱病の危険信号が出たら退職するべきなのかについてまとめます。
鬱病のサイン
そもそもどのような病気なのか
鬱病は、気分が強く落ち込んで憂鬱になるなどの精神的な症状のほか、ちょっとしたことで涙が出るようになった、気持ちが悪くなるといった身体的な症状が現れる病気で、気分障害の一つです。厚生労働省の調査では、1996年のときには約43万人だった患者数が2008年には約104万人と2倍以上に増加していることがわかっています。
どのようなメカニズムで発症するのかについてはまだ明確にわかっていません。ストレスによって感情や意欲を司る脳にトラブルが起きていて、脳の神経細胞同士でやり取りされるセロトニンなど神経伝達物質の働きが悪くなっていると考えられています。
鬱病の症状
精神的な症状と身体的な症状に分けることができます。これらの症状は、日常生活の中で誰にでも起こり得るものです。複数の症状が1〜2週間程度続く場合は、病気の可能性が高くなります。
精神的な症状
不安や焦り・イライラ感:常に不安な気持ちがつきまとうようになると注意が必要です。症状が重くなると、仕事中にうろうろと動き回ったり、同じ行動を繰り返したりするようになります。また、気を紛らわせるために飲酒量や喫煙量が増えるといったこともあります。
喜んだり楽しんだりできない
うまく笑えなくなる人もいるようです。気持ちが落ち込んで、否定的・悲観的な気持ちになることが増えます。
集中できずに仕事でミスが増える
他の人から見てもわかりやすい症状の一つでもあります。仕事に向き合うためのやる気や集中力が上がらず、パフォーマンス能力が見るからに落ちていきます。書類の誤字脱字や計算ミスなどケアレスミスが多いとたるんでいるのではと周りから思われてしまいがちですが、病気の場合があります。
涙が出る
大人になると泣くことは減りますが、ふとしたときに涙が出るなど、涙もろくなったと感じる際には注意が必要です。周囲の人間が異変に気付く症状の一つでもあります。
他にも無関心になったり、意欲的に取り組めなくなったりすることがあります。外見や服装を気にしなくなった場合、人の話しやテレビの内容が頭に入ってこなくなったときも注意が必要です。
身体的な症状
頭痛、耳鳴り、動悸、めまい、吐き気などさまざまな身体的不調が現れます。
睡眠障害
眠れないといった症状以外にも、寝つきが悪い場合や睡眠中に何度も目が覚めてしまう、起きたい時間よりも早く目覚めてしまうなどさまざまなパターンがあります。また、逆に眠り過ぎてしまう人もいるようです。
疲れやすい
加齢よるものとは思えないほど急に疲れやすくなったと感じる場合も注意が必要です。朝起きた時に異常に身体が重い、疲れが取れる感覚がないといったことが何日も続く場合は鬱病の可能性があります。
食欲不振や過食
ストレスがかかると食欲に影響が出てきます。それによって不健康に痩せてしまったり、ストレス太りと言われるように激太りしてしまったりと体重の変化にも繋がります。
さまざまな身体的な症状を挙げましたが、なんとなく気持ちが悪くなるなど自分の症状を言葉で説明できない場合もあるでしょう。セルフチェックシートもあるので、そういったものを使って自分の病状を把握してみましょう。
仕事に行きたくないは気分?鬱病か?
日常生活の中で仕事に行きたくないなど憂鬱になることは誰でも経験することでしょう。仕事に行きたくないという気持ちが、感情の波によるものなのか、病気によるものなのか区別するポイントがあります。
落ち込んだ「気分」の場合は、原因がはっきりしていることが多いです。月曜日や休み明けで仕事に行くのが面倒くさい、上司や同僚との人間関係にトラブルが生じた、納期がせまった仕事があるなどです。そのため、その原因が解消されたり気分転換をしたり、またある程度時間が経つことで次第に憂鬱な気分は消えていきます。
しかし病気の場合は、気分が落ち込む明らかな原因がわからないことがあったり、原因が解消されても気分が回復しなかったりします。そして、上記のような原因が長期にわたって続くと鬱病へと進行していくことがあります。慢性的に憂鬱な気分が続く場合や、仕事に行く途中に気持ちが悪くなるなど身体的な症状を伴う場合は病気の可能性があります。
鬱病の危険信号が出たら退職するべきか?
会社に行きたくない、涙が出る、気持ちが悪くなるなど複数の鬱病の危険信号が出たら退職するべきなのでしょうか。
まずは病院に
鬱病かなと思ったら、まずは早めに医療機関を受診しましょう。精神科や心療内科、メンタルクリニックなどで診察を受けることができます。もし、いきなり病院に行くのは抵抗があるという方は勤め先の産業医に相談するといいでしょう。
治療には4つの柱があり、薬物療法やカウンセリングなどの精神療法、休養と環境調整です。薬物療法や精神療法は、病院の力を借りる必要があります。ただ、病院の治療だけでは不十分で、十分な休養をとって心と身体を休ませることや、ストレスの原因となっている環境を変えることが重要です。
休職を考える
環境を変えるためには退職するしかないのかと考えてしまいますが、その前にまずは会社に相談してみましょう。会社によって制度に違いがありますが、休職制度がある場合はそれを活用してゆっくり休息するのも一つの方法です。休職期間に健康保険組合から傷病手当金がもらえることもあります。また、職場での配置転換や残業時間の短縮などの配慮を行ってもらえるかもしれません。
退職する
危険信号が出たら退職するべきとすぐに考えるのではなく、会社に相談後、部署の配置転換や勤務時間の見直しを行ってもらえず、職場環境が変わる見込みのない場合には退職することを検討しましょう。しかし、退職してすぐに別の仕事に就くと、その環境の変化がまた大きなストレスとなってしまうこともあります。
退職後に一番にするべきことは、しっかり休養を取って鬱病の完治を目指すことです。家族など周囲の人間の力を借りながら治療に専念しましょう。厚生労働省が調査したところ、精神的な不調によって仕事を休養した人が復帰までにかかる日数は平均で107日、約3.5か月という結果が出ています。もちろんそれ以上かかる場合もありますし、早く治る場合もあります。焦らずに慎重に自分の心と身体に向き合っていきましょう。
鬱病の症状は周りから甘えと思われることも少なくなく、そういった周囲の視線がさらに症状を悪化させてしまうこともあります。どこまでが正常の範囲内で、どこからが異常なのか理解して、自分の心身の状況をしっかりと把握しましょう。また、危険信号が出たら退職するべきとすぐに判断せずに、今の会社に相談をしてみましょう。
理解を示して働き方を変えてくれるかもしれません。大切なことはひとりで抱え込まないことです。鬱病にかかりやすい人は真面目で几帳面な性格で、自分に厳しいために周りにあまり頼ることができない人と言われています。医者や会社の上司、家族など周囲の人間を適切に頼りましょう。