発達障害の方が仕事を見つけるのは、そう簡単には行かないことが多いです。障害について理解のある企業、安心して働ける職場環境を持っているところというのは、あまり多くないからです。また、発達障害と一口に言っても、それぞれの方で障害の度合いや種類が異なります。
そのため、丁寧で個々のニーズに合った就労支援の取り組みが必要となっています。公的な支援制度もありますし、民間でも様々なサービスが提供されているので、上手にこうした支援を活用して就職を目指したいものです。
発達障害の方専門の就労移行支援とは?
発達障害によって仕事を見つけたり、同じ職場に定着して働き続けることが難しかったりする方に一貫したサポートを提供する取り組みがなされています。その一つが、発達障害の方専門の就労移行支援です。これは、2006年に施行された障害者自立支援法に基づいて、福祉サービスの一環として就労支援を行う事業のことを指します。全国に存在する発達障害の方向けの就労支援センターが、総合的なケアを行います。
具体的には、まず相談業務からスタートします。発達障害はそれぞれの方で症状の出方や度合いが異なります。そのため、はっきりと状態を把握した上で、どんな業務が可能かやどんな仕事をしたいと思っているかなどを確認していきます。利用者本人はもちろんのこと、必要に応じてご家族の意向を確かめることもあります。そのようにして、最も適切な就労支援ができるように状況確認を行うのです。
その上で、能力開発を行っていきます。挨拶や身だしなみといった社会人としての基本や、ビジネスマナーなど仕事場で求められることについても、丁寧に研修を行っていきます。さらに就職の機会を高められるように、パソコンの操作方法を指導するなどの実務的な訓練を実施している事業所もあります。特定の業種に強い事業所では、さらに深いスキルについて訓練を施し、即戦力となるように助けていくことができます。
こうして就職準備を済ませることができたら、就職活動に必要な書類の作成や面接対策などを一緒に行います。就労支援センターでは、たくさんの企業とのつながりがあります。発達障害の方への理解があり、すでに障害者雇用をしている実績を持つ企業も多いので、より採用のチャンスが高いのがメリットです。
本人の希望などを考慮して、より適切な企業を紹介して内定まで行けるように支援していきます。就職した後も、継続的にケアを続けるのも特徴です。職場に慣れることができたか、何か悩みを抱えていないかなどを尋ねて、職場に定着できるようにサポートをします。
こうした就労支援を行っている機関はいくつもあります。福祉事業としてサービスを提供している就労移行支援事業所の他に、発達障害者支援センターや地域障害者職業センターなどもあります。それぞれの機関によって、提供している支援事業や紹介している企業の層が異なります。事前に最寄りの支援機関を調べて、より自分たちに合ったところを利用することが大事です。
様々な障害者雇用の取り組み
こうした就労移行支援に関連するものとして、様々な障害者雇用を促進する取り組みがなされています。特にハローワークに関連して、いろいろな制度が実施されていますので、上手に活用したいものです。
たとえば、職業能力開発校における職業訓練があります。この訓練期間では、幅広い層に向けてそれぞれの業種における実践的な実務技能や知識を教えています。内容によっては業務に必要な資格を取る支援も得られますので、就職チャンスを高めるために大いに役に立ちます。
この職業能力開発校では、発達障害の方を対象とした訓練プログラムも設けられています。障害の程度や本人の能力に応じて柔軟な訓練がなされているので、スキルを伸ばすための助けを得られます。
ハローワークそのものでも、発達障害の方を支援するための取り組みがされています。発達障害を抱えていると、見知らぬ人と会話をするのが難しいことがあります。そこで、仕事についての相談をしたいという人には、きめ細かな個別の相談をする体制を整えています。
必要に応じて、すぐに発達障害者支援センターに連絡を取り、欲しい情報を提供したり丁寧な相談をしたりできるようにします。こうした支えにより、悩みを話したり、仕事について持っている希望などを明確にしたりすることができるのがメリットです。
さらに、地域によっては「発達障害者雇用トータルサポーター」をハローワーク内に配置しています。発達障害を抱える方とのコミュニケーションに慣れているプロが、どんな支援を受けられるか、どんな企業が求人を出しているかなどを教えてくれます。また、事業者に対しても発達障害者を雇用するためのサポートを行っていて、求人が増えるようにとの努力が続けられています。
発達障害の方を対象とした転職就職サポート
このように、ハローワークを中心に発達障害の方を対象とした転職就職サポートは、様々な角度でなされています。より多くの企業が発達障害の方を雇用するようにと、障害者トライアル雇用事業という制度が設けられているのもその一つです。
この制度では、原則として発達障害の方を3か月の試行雇用することを促進しています。このトライアル雇用によって、発達障害の方が職業訓練を実地で受けられますし、職場に慣れて本格的に働く準備をすることができます。また、企業としても求職者の能力ややる気などを見極めることができますので、お互いにとってメリットのある制度と言えます。
社会福祉事業として就労移行支援事業所を展開している法人では、発達障害の方への支援実績が豊富なところもあります。事業所に作業療法士や精神保健福祉士などの資格保有者が在籍していて、より深いケアを提供できる体制を整えているところもあります。
実践的な業務に関係する訓練をするだけでなく、一人の社会人としてより良い資質を身に着けられるようにサポートできるのが強みです。コミュニケーション能力を磨いたり、問題に当たった時の考え方の訓練などをしたりすることも可能です。
また、シミュレーション訓練を実施しているところもあります。単に就職できるだけでなく、職場に定着できるように実際の職場をイメージした訓練をしているのです。事務職などの業務がどのようにされているかをかなり本物に近い形で再現して、仕事の流れや仕事仲間との関係などを体験できます。
このシミュレーション訓練を受けることで、初めの就職でも精神的な負担を減らせます。また、自分の適性を見極めて、より働きやすい業種を見つけるのにも役立ちます。
発達障害の方を対象とした無料就業トレーニング
このように、発達障害の方を対象としたたくさんの支援が存在します。気になるのは、利用料金はいくらかかるのかという点です。たとえば、前述の就労移行センターにおけるサポートは、所得によっては数百円から1,000円程度の費用がかかることもあります。
しかし、ハローワークや地域の職業訓練制度でなされているものについては、無料就業トレーニングが実施されていますので、費用負担について心配する必要はありません。費用の面で不安を抱えているのであれば、役所の担当課やハローワークで相談してみると良いでしょう。それぞれの状況に合った適切なトレーニングや、無料で受けられる機関についての情報を提供してくれます。
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