「薬の知識では医療の専門家には太刀打ちできないのに、営業先の医師に無知なことを責められて辛い」、「営業が終わって会社に戻るのは20時ごろ。そこから書類の作成もあるけど、みなし残業だから残業代が出ない」…。
MRは、何の仕事をしているのかあまり知ってもらえないわりに、精神的にも肉体的にも非常にハードな仕事です。MRを続けることに限界を感じ、人間らしい生活を取り戻すために転職を考える人もたくさんいますね。
MRから転職しやすい業種・職種にはどんなものがあるでしょうか?また、MRから他の業種への転職を有利に進める方法はあるのでしょうか?MRから他業種に転職したい人が知っておくべき情報を紹介します。
MRを辞めたい理由は?
MRはパワハラやみなし残業を悪用した激務が多い
MRは医療のプロである医療従事者を相手に営業しなければならず、どうしても知識の点で医療の専門家よりも劣ってしまうため、顧客である医師などから罵詈雑言を浴びせられることもしばしばです。
一方で、会社からは断られても再度営業に行くことを強要されますし、地域特性的に売れにくい医薬品の担当になってしまうと契約が取れず、社内でも暴言を浴びることになりがちです。
これらのパワハラに加え、MRはみなし残業制度を悪用したブラック労働も強いられる現状もあります。(MRの仕事の内容には、法律上みなし残業を適用してはいけない業務もたくさんあります。)
厳しいノルマ、休日の接待もある
MRは営業成績を上げられる人であれば、他の仕事よりも高年収が得られ、医療を通して社会に貢献できるというやりがいもあります。
ですが一方では、知識不足を営業先の医師に罵倒され、営業成績が低いことで社内では窓際扱い、ということも珍しくないのが実態です。
医師の信頼を得て成績に繋げるために、自社の製品だけでなく、他社製品や医療全般についても精通しておかなければなりません。そのために学会への参加など、勉強量も膨大です。
成績を上げるには多くの勉強時間を確保しなければなりませんが、みなし残業の悪用で長時間残業が当たり前、休日も接待に当たらなければならないのがMRです。精神的にも肉体的にも、相当タフでないと務まりません。
ジェネリック医薬品の台頭で既存薬が売れにくい
国政でジェネリック医薬品が推奨されていることも、MRがノルマを達成しづらい大きな原因になっています。値段が安く、国にも国民にもメリットが大きいジェネリック医薬品に対抗して、価格の高い既存薬を何とか売らなければなりません。
会社の上層部からも「既存薬を売れ、既存薬のシェアを守れ」と強い圧力を掛けられます。それならジェネリック医薬品メーカーのMRなら有利に営業できるかといえば、ジェネリック医薬品のMRも決してラクではありません。
ジェネリック医薬品はどの製薬会社でも取り扱えるので競争が激しい上に、ジェネリック医薬品メーカーは企業規模が小さいため、先発医薬品メーカーに比べて年収も150万円以上低いです。
営業成績が低ければ減給、うつ病も発症しやすい
無茶な条件での営業活動であるにもかかわらず、営業成績が低ければ当然のように減給されます。連日の残業で疲弊しているところに、外部でも内部でもパワハラにさらされ続けるため、うつ病を発症して退職するMRが後を絶ちません。
メーカー勤務の場合は出張が多く、転勤の可能性もあるので生活基盤が安定しにくいというのもあります。
「必要な薬」でなく「儲かる薬」を余るほど売らなければならない
医療を通して社会に貢献できることに魅力を感じてMRになる人も多いです。しかし製薬企業は営利団体なので、利益も追求しなければなりません。その結果、「患者に必要な薬」よりも「儲かる薬」を優先的に売らなければならなくなっているのが実態です。
過酷なノルマもあるので、不要な薬を余るほど売らなければならないのがMRです。必死に営業しても余剰在庫となった薬が現金問屋に流れて行くのを見て、やりきれない思いをしているMRも少なくありません。
女性MRはライフイベントや家事との両立が難しい
女性MRの場合は、出産や育児との両立が不安で退職する人も多いです。子供を持たないまでも、結婚すれば家事は妻の役割になりがちです。激務であっても家事もこなさなければならないために、MRを続けられなくなってしまう女性もいます。
また、結婚後の頻繁な出張や転勤は困るという理由で転職を考える女性MRも多いです。
MRから転職、おすすめの転職先は?
医療業界はMRの経験を活かせるので転職しやすい
治験コーディネーターや臨床開発モニター、医療コンサルタントなど、医療業界内での転職ならMRの経験を活かせるので転職しやすいです。医療業界の人間とのコミュニケーションには慣れが必要ですが、その点でも他の業種から転職してくる人や新卒より有利です。
医療機器など、医薬品以外の医療関連の営業職も、営業相手は医師のままで扱う商材が変わるだけなので転職しやすいです。
また、雑誌やインターネットなどで医療情報を発信する会社やMR教育用のパンフレットを作成する会社に、メディカルライターとして転職する方法もあります。
学術DI、コールセンター
製薬会社やCSO、大手ドラッグストアチェーンなどの学術部で、問い合わせに対応する仕事です。医師や薬剤師など、専門性が高い人からの問い合わせに応じなければならないため、MRの専門知識が役立ちます。子育て中でもワークライフバランスを取りやすい職場も多いです。
CRA(臨床開発モニター)
治験に携わる仕事で、臨床試験の実施状況の確認や、症例報告の回収などを行います。医薬品開発に貢献することで社会の役に立てるのでやりがいがあり、MRの知識も活かせます。男女比は女性が多く、子育て中の女性でも働きやすい環境の職場が多いです。MRからCRAを目指す女性もたくさんいます。
CRC(治験コーディネーター)
医療機関で治験業務の補佐を行う仕事です。CRAが製薬会社側の立場で治験に携わるのに対し、CRCは医療機関側の立場で治験に携わります。CRAに比べてMRからの転職の難易度が低いです。CRCも女性が多い職種で、産休・育休や有給も取りやすく、復帰しやすい職場が多いです。転勤の心配も少ないです。
医療機器メーカーなど、医薬品以外の営業
医療機器や検査薬など、医薬品以外の医療関連の営業だと、時短勤務など家庭と両立できる条件を提示している企業もあります。営業相手は医療従事者のまま、取り扱う商材が変わるという感じなので、MR経験者には比較的やりやすい仕事です。
ただし、医療機器の営業に関しては手術に立ち会って機器の使用方法を説明しなければならないため、血や具合が悪い人が苦手な人には辛いです。
薬剤師免許を持っているなら薬剤師も転職しやすい
製薬業界で働くMRの中には薬剤師免許を持っている人もいますが、薬剤師免許を持っている場合は薬剤師も転職しやすいです。優秀なMRが持つ医師とのコミュニケーションスキルは、調剤薬局でも需要があります。
調剤薬局には医療機関への営業業務もあるので、医師に営業するスキルと薬剤師としての資格を併せ持つ人材は人気があります。実際に、大手製薬会社のMRを辞めて薬剤師に転職する人も多いです。
勤務条件も、結婚・出産後も働ける環境の職場が多く、女性のライフイベントと両立させやすいです。
生命保険の営業は採用されやすくMR時代の人脈を活かせる
営業職自体が嫌なのでなければ、生命保険の営業は転職しやすいです。健康診断さえクリアできれば、ほとんど誰でも採用してもらえます。
MRから転職する人の場合は、医師や薬剤師など高所得層の人脈が多いので、その人脈を活かせば高額契約を取りやすい強みがあります。
朝夕は朝礼や報告で出社しなければなりませんが、それ以外の時間は自分の裁量で時間の使い方を決められるので、プライベートと両立しやすいです。勤務時間にしっかり営業できる人であれば、残業もそれほど多くありません。
医療経営コンサルタントはMRから転職しやすい
医療経営コンサルタントは開業医や病院に対して経営サポートを行うため、医師とのコミュニケーションスキルを持つMR経験者は転職に有利です。
医療経営コンサルタントになるには、「日本医業経営コンサルタント協会」で専門の資格を取得します。
MR専任の転職コンサルタントに転職した人も多い
転職コンサルタントは自分が詳しい業界の求人を担当していることが多く、特に大手転職エージェントではMR専任チームもあり、元MRのコンサルタントも非常に多いです。
MR経験があるコンサルタントは、MRをはじめ医療業界で働いている転職希望者の悩みやニーズを理解しやすいことが大きな強みになります。
また、製薬会社が新しい薬を発売するときには、エージェント経由で営業の人員を大幅に増員することが多く、それだけMR経験者は転職コンサルタントとしての需要も高いです。
医薬品開発受託機関
MRの転職先で一番多いのは、医薬品開発受託機関です。また、「社内の人間関係やワークライフバランスに不満があるものの、MRの仕事自体は好きだ」という人の場合は、MRという職業は変えずに、もっと働きやすい製薬会社に転職する方法もあります。
特に女性の場合は、出産・育児との兼ね合いを考えてMRを辞めたいと思う人も多いですが、女性MRの働きやすさを考えてくれる製薬会社もあります。そうした会社に転職してMRを続けるのも方法の一つです。
また、CSO企業でコントラクトMRとして働く選択肢もあります。製薬会社勤務のMRに比べて働きやすいです。
コントラクトMRならプライベートと両立しやすい
MRでも、メーカー勤務でなく、コントラクトMRという働き方であれば、ライフイベントを含めたプライベートと両立させやすいです。CSOから製薬会社に派遣される形なので、福利厚生や年収の面ではMRに劣るものの、勤務地を限定して働くことができます。
子育てなどのためにブランクがある女性MRの復帰にも、CSOは積極的です。ただし、CSOは若い人材を求める傾向が強く、40代後半以降は参加できるプロジェクトがなくなってしまう可能性があります。
外資系製薬会社は女性も比較的働きやすい
外資系の製薬会社は、一つのエリアを二人体制で担当することで、時短勤務が可能なシステムになっていることがあります。このような職場であれば、MRの仕事と家事や育児を両立させやすいです。
ただし、産休・育休で長期休暇を取ってしまうと復帰は難しいです。休みの間は自分の担当エリアは他の人が担当することになりますが、休暇を終えたMRが戻ってくるからといって、代理の担当者を解雇できないからです。
ワクチンMRは時短勤務が可能
基本的にMRは女性のライフイベントがあまり歓迎されない職種ですが、例外的にワクチンMRは育児経験のある女性を採用したがる企業が多いです。ワクチンの接種対象となるのは主に乳幼児なので、育児経験のある女性MRの情報提供が有用だからです。
育児経験ありの女性MRに働いてもらえるように、時短勤務制度も導入されています。ただし、ワクチンMRは求人数が非常に少ないため、早くから転職に備えておく必要があります。
「プライベートを大切にしたいが、MRの仕事自体は嫌いじゃない」という人は、これらの選択肢も検討してみるとよいでしょう。
本気で転職するなら転職エージェントを活用しよう
求人を転職サイトでストックしつつも、本気で転職したいと思ったら、転職エージェントも活用するのがおすすめです。転職エージェントに登録することで、専任のキャリアコンサルタントが担当につき、転職サイトには出てこない非公開求人を紹介してもらえます。さらにキャリアコンサルタントには応募前に履歴書や職務経歴書をチェックしてもらったり、面接で企業がどんな質問をしてくるか事前に情報を得られるので、選考通過率が格段に上がります。
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まとめ
働きやすい社風や勤務条件の会社に移ってMRを続ける方法が一番簡単です。ですが、MR以外の仕事に転職したい場合は、MRの経験を活かせる仕事を選ぶと採用されやすいです。
ただし、MRが他の仕事に転職すると、年収が大きく下がる問題があります。なるべく年収を下げずにMRから他業種へ転職するには、転職エージェントに登録し、非公開求人を紹介してもらうのがおすすめです。
非公開求人なら好待遇の案件が多く、高年収のMRでも許容できる条件の求人が見つかりやすいです。