銀行員は高収入で安定している、というイメージが持たれがちです。そうしたイメージから、異業種からも銀行員への転職を希望する人も少なくありません。銀行員は、幅広い金融知識が求められる職種です。未経験でも、これまでの経験を活かせる可能性もあります。

この記事では、銀行員の実際の仕事内容や年収、必要な資格を紹介します。
また、異業種から銀行員に転職するには、どのような勉強をしておくとよいのか銀行員に必要なスキルはなにか、中途採用で銀行員になるための方法について解説します。
銀行員への転職を考えている人は、参考にしてみてください。

実は業務が多岐に渡る銀行員の仕事内容は?

銀行の三大業務

①預金業務

普通預金、各種定期預金、当座預金などの銀行口座を管理する仕事で、個人や企業を問わず多くの顧客から資金を預かるのが預金業務です。
このような窓口担当者は「テラー」とよばれ、一般職の行員が従事することが多いです。

②貸付業務

貸付業務は、資金が必要な個人や企業に対してお金を融資する業務のことで、銀行はその利率をもらうことで利益を得ています
融資するには調査と審査が重要で、その分析をもとに融資額、貸付期間や妥当な利率を算出しています。融資先が倒産したり破産したりして資金を返せなくなってしまった場合、銀行に損失を生むことになるので重要な業務の一つです。

③為替業務

為替業務は、公共料金の口座振替などで銀行口座をもつ顧客からの依頼によって、振り込みや送金を行う業務のことです。近年では、自動振込機やインターネットなどを使って振り込みを行うサービスもあります。

外国通貨や債券を売買する外国為替部門は為替業務の花形であり、取り扱う金額が大きいマネーディーラーはかなり責任が重いポジションとなっています。

渉外業務

銀行の営業活動に当たるのが、渉外業務です。顧客を訪問してニーズを聞き出し、販売や融資につなげていきます
ノルマが課せられている場合が多く厳しい仕事ではありますが、ノルマを達成し営業成績を伸ばした分だけボーナスなどにきっちり反映されます。

金融商品の販売

近年、金融商品の取り扱いが銀行の主要業務のひとつになっています。最近では、投資信託、損害保険や生命保険の中でも、銀行であることをメリットにした貯蓄性の高い保険商品などが人気です。

その他の業務

銀行の業務は、国債や社債、債券や株式などの売買、ローンや財産運用の相談、貸金庫の管理、手形の引き受けなど、今までに見てきた業務以外にもお金にかかわるさまざまな仕事があります。

銀行員の仕事内容は配属される部署や職種によって、全く違う仕事と言っても過言ではありません。

高収入で将来は安泰?憧れる銀行員の実態とは

年収は銀行業態によって差が大きい

銀行業態 平均年収
大手銀行 757万8,000円
地方銀行 623万9,000円
第二地銀 554万2,000円

出典:東京商工リサーチ http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20180730_01.html

国内銀行91行の2018年3月期の平均年間給与は609万円でした。
銀行員と一口にいっても、その年収は銀行の規模や地域によってかなりの開きがあり、業態別の平均給与では、大手銀行が757万8,000円、地方銀行が623万9,000円、第二地銀は554万2,000円となっています。
業態によって開きはあるものの、平均年収は高めになっていますが、前年度よりも下がっている銀行が多く、下がらなかった銀行は約2割程度にとどまっています。

ちなみに、平均年収トップ3の企業は4年連続同じ顔ぶれで、
1位:三井住友銀行(810万5,000円)
2位:スルガ銀行(800万8,000円)
3位:東京スター銀行(796万4,000円)

と、なっています。

勉強づくしの毎日

銀行員は、お金に関するあらゆる業務を担当するので、簿記やFP、税務などの知識が求められ、それらに関する資格取得も積極的に行います。
また、規制緩和で金融業の垣根が低くなってきたこともあり、証券や保険の知識も求められます。証券外務員や保険の募集人資格などの資格も必要になってきます。
未経験から銀行員になる場合は、専門的な知識や資格などは入行して仕事をしながら勉強して取得するケースが多いので、仕事後やお休みの日も常に勉強をしなくてはいけません。

FinTechの波。銀行員の将来性は危うい

FinTech(フィンテック)とは、金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせて生まれた言葉です。ネットバンクが庶民生活にまで浸透したことにより、スマホやPCでの決済や資産管理はもちろん、資産運用のアドバイスまでAIが台頭しつつあります。この流れは今後も加速していくと考えられるので、銀行員の仕事も将来性が厳しくなります。それに負けないよう、専門的な知識を身につけ、日々努力することが大切です。

ネットバンクに押されつつある銀行

商品ラインナップも豊富で、手数料も安い、金利も良いとなれば、ネット銀行に資金が流れるのは自然なことです。銀行は熾烈な生き残り争いを強いられることは必至です。また、銀行は極めてタイトな規制産業なので、政府の政策次第でどうとでもなってしまいます。自助努力では限界があるというジレンマもあり、とても厳しい業界です。

メガバンクの大規模リストラ

メガバンクは、バブル期に大量採用された世代が管理職クラスになっていて、人件費がかさみ、経営を圧迫しています。今後も、メガバンクでは大規模リストラが行われる可能性があり、銀行の統廃合はこれからますます増えていくと言われています。メガバンクに入れば安泰、という時代は終わりました。特に、融資担当者は将来消える可能性が大きい職種です。

未経験から銀行員に転職する方法

銀行員の未経験中途採用は狭き門

メガバンクは経済学系、経営学・商学系、法学系学部の出身者の新卒採用がメインで、あとは専門職求人なので、中途採用のハードルは高いです。

中途採用があっても、条件に経験者と書かれていることが多いため、よほどのスキルやキャリアがないと応募することもできません。未経験者でメガバンクへの途中入社は、かなり難しいと思ってください。

グループの子会社・関連会社から入る

銀行本体には未経験からの中途採用は厳しいですが、未経験からの入社に比較的門戸の広い証券会社や保険会社などグループ内の企業を経由してなら入れる可能性があります。
ただし、その会社で実績を上げてキャリアを積まなければならず、簡単な道ではありません。

他業界で金融機関の経験を積む

一見、銀行とは関係ないような業種でも、アピール材料になることはあります。たとえば、社会保険労務士やSEなど、業種や職種は異なっても、経験を活かして銀行内のその部署で活躍することは可能です。入り口は一つではないので、いろいろな可能性を探ってみてください。

女性はパート・派遣からの入り口もある

女性は、結婚や出産で銀行員を一度退職し、その経験を活かしてパートや派遣社員として復職する方法もあります。銀行も人件費を抑えたいので、正社員を採用せず、業務経験のあるパートや派遣社員の方が採用のメリットが高く、コストも抑えられます。正社員登用ありというケースもあるので、特に女性は計画的にパートや派遣社員という求人を活用するべきです。

英語スキルを磨く

メガバンクの総合職のTOEICの平均点はいまや800点を超えています
銀行業態にかかわらず、海外取引をしているお客様を多く抱えているため、銀行員にもグローバルな感覚が求められます
英語のスキルを上げておくことで、海外の金融機関と提携するなど銀行員としての幅が広がるので、採用の可能性も上がります

銀行員に向いているのはどんな人?

まじめで几帳面

銀行員の業務には常に数字が付きまとい、ちょっとのミスから大惨事になりかねない仕事をしています。
そのため、細かい作業の確認も怠らず正確性を追求できるような人でなければ銀行員は務まりません。

正義感が強い

人様のお金を扱う仕事なので、誠実で正義感が強いというのは大前提です。
もしも横領などの不正を働いてしまった場合、自分だけではなく銀行が顧客からの信頼をすべて失うことになります。
最近では個人情報の取り扱いも厳しくなっているので、顧客情報の流出なども厳禁です。

対人スキルが高く人当たりが良い

銀行員になると、人と接する機会が驚くほど多いです。その中でも窓口業務などはサービス業とも言えるので、コミュニケーション能力や清潔感、人当たりの良さなども大切です。
面接でも、対人スキルの高さは必ずチェックされます

メガバンク・地方銀行・信用金庫。働きやすいのはどこ?

メガバンク

一昔前は、メガバンクに入れれば安泰という時代もありましたが、今はそうではありません。
メガバンクでは、銀行員の待遇は人によってかなり差が出ます。また、組織が巨大で銀行以外にも信託銀行や証券会社、不動産やローン会社など金融に係るあらゆる企業がグループ内に存在します。たとえば銀行で実績をあげられない人や、ある程度の年齢が来て給料が高止まりするとグループ会社に「出向」といった形で、給料がドンと下がってしまう、というリスクもあります。

地方銀行

銀行によって経営状況の差が激しいという現実があります。地方銀行の中でも、第一地銀と第二地銀での格差は大きいですし、その地方の経済状況に大きく左右されます。地方銀行に転職するなら、「強い第一地銀」がおすすめです。ただし、第一地銀は支店も多く県外にも営業所があるなど、転勤が多いという点は否めません。

信用金庫

信用金庫は、そもそも銀行とは設立の理念が異なります。信用金庫は、地域の人々との相互扶助を目的としているため、株式会社である銀行のように利潤追求が命題ではありません。外資系企業も信用金庫の仕事には手を出さないので、乗っ取られることもなく、これ以上大きくなることはないが、簡単につぶれることもない、といったメリットがあります。ただ、銀行に比べて待遇は劣ります

思わぬ悪待遇で泣かないために、選ぶべき銀行の条件

FinTechにも負けない有力商品がある

手数料や金利水準だけを比較すると、ネットバンクには太刀打ちできません。たとえば、高齢者向けの相続対策案件などの資産運用が他行と比べて強いなど、AIではまかないきれないコミュニケーション力が重要となる仕事に強みを持っている銀行がおすすめです。

学閥・派閥争いが無い

これはメガバンクに多いですが、学閥や派閥が存在し、それが人事に影響するような銀行はおすすめできません。「出身大学が○○でない」とか、「副社長派・専務派」といった、いくら仕事ができても変えようのない事実で昇進などを左右されては迷惑です。

思わず二度見するようなノルマが無い

もちろん、銀行員にもノルマは存在します。融資担当なら融資額、渉外担当なら預金額といったノルマはもちろん、窓口担当行員にも、カードの契約や定期預金などのノルマが課されます。現実的ではないノルマを押し付けられるような銀行は、精神的に疲弊し、長く勤めることができないので避けるべきです。

避けるべき銀行の特徴

ブラック企業並みの厳しいノルマがある

特に融資担当はノルマが厳しく、窓口業務終了後に怒号が飛び交うのは当たり前の世界です。「借りたいという会社には融資せず、借りる必要がない会社には無理やり融資する」と言われるように、銀行にとって重要なのは債権回収できるかどうかで、どこにでも融資するわけではありません。ノルマをこなしたくても簡単ではない現実もあります。

経済状況の悪い都市銀

経済状況が悪い地方は、銀行がそのあおりをまともに受けます。不良債権が増えたり、預金残高が減ったり、その地域の景気は銀行の業績に直結するので、特に地方銀行へ転職するなら、地域を選ぶことも大切です。

銀行の内部まで見抜くことはできるか?

中の人に聞くのが確実な方法

親戚や友人など割と身近に銀行員がいる人も多いのではないでしょうか。メガバンク、地方銀行など業種や職種によって実情は異なりますが、同じ銀行で働く人の話を直接聞ける機会があれば、それが一番信頼できる情報と言えます。様々な伝手をたどって、銀行員から直接話を聞けるチャンスを探ってみてください。

転職エージェントのサポートを利用するのも手段の一つ

直接話を聞けるような伝手がどうしてもない場合は、転職エージェントを利用するのも一つの方法です。相手はプロのキャリアコンサルタントなので、個人の価値観ではなく、客観的に銀行を評価した意見を述べてくれます。また、さまざまな銀行の内情を知ることができる立場の人間なので、一つの会社の常識にとらわれず、偏りのない話を聞くことができます。

リクルートエージェント

リクルートエージェント

人材紹介大手のリクルートが運営する転職エージェントです。圧倒的な求人数と転職成功実績を持ち、様々なノウハウを蓄積しています。キャリアコンサルタントには、リクルートグループでも優秀な人材を揃えていると言われていて、各業界に精通したプロのアドバイスを受けることができます。

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まとめ

未経験から銀行員へ転職するには、メガバンクは厳しいですが地方銀行などでは可能性があります。

その方法としては、

・グループの子会社・関連会社から入る
・他業界で金融機関の経験を積んでおく
・女性はパート・派遣から正社員登用をめざす

といった方法が現実的です。
また、簿記やFP資格はもちろん、グローバル化に対応できるだけの英語力も磨いておくことが求められます。

ただし、銀行は業態や業務内容が様々なので、どの銀行のどの職種を選ぶかによって待遇や労働環境は大きく変わってきます。
そのため、実際に銀行員として働く人の話を聞いたり、転職エージェントのコンサルティングを受けるなどして、求人選びに失敗しないことが大切です。