2022年初頭から感染拡大の速度を大幅に増していった新型コロナウイルス・オミクロンですが、これまで社会に与えた影響の大きさは計り知れないほどで、これまでの日本では常識とされてきた働き方も大きく変化することとなりました。

近年の大きな問題は正社員と非正規社員の二極化に伴う格差の拡大でしたが、コロナ禍にあって業績を大きく落とした企業が増えた中で、それでも雇用を維持しようと企業も妥協を迫られた結果、これまで頑なに禁じてきた副業を解禁する流れも主流となりました。

さらに、1人がフルタイムで週に5日間働く業務量を分散するために、ワークバランスを調整して、2人が週休3日4日で働くことも可能な仕事も考慮されるようになり、もはや画一的な働き方という定義も失われたのかもしれません。

変わる働き方と週休3日制のメリット

そうした環境も追い風となり、近年では働き方の多様性が認められやすくなったとも言えます。特に20代〜30代の若い層においては、ひどい時には社畜とまで評されるような従来の会社人間という価値観に疑問を呈し、仕事とプライベートを完全に分けて、ワークライフバランスを重視する風潮が生まれています。

企業としても、できるだけ経験も豊富で優秀な人材を雇用したいと願っていますので、そうした要望を無視して働かせることも難しくなりつつあります。そこで、雇用する企業と雇用される従業員が、双方ともに納得のいく形での合意が求められるようになった結果、週休3日勤務を選択できる企業も増えてきました。

働き方の柔軟性を得られるという意味で、従業員側に多くのメリットがあることは言うまでもありませんが、コロナ禍で加速した働き方の多様性に対応する施策の1つとして、企業にも週休3日制を採用するメリットは大きく存在します。とりわけ、企業の業績アップに貢献できる人材を採用しやすいという、人事面の理由を挙げられるでしょう。

優秀な人材ほど、近年の労働環境や待遇、将来性などを客観的に分析し、個人のワークライフバランスを考慮しながら就職を検討するはずであるという前提から、企業はそうした環境を整備することに前向きになりました。優秀な人材が魅力的な企業であると判断する条件の1つに週休3日制も加われば、それを満たす企業に優秀な人材が集めるという流れが生まれます。

ライバル企業にみすみす優秀な人材を囲われるリスクがある以上、自社でも週休3日制を導入しなければ人材面で不利を被ることになるという流れは、もはや止まらないでしょう。

そうであるならば、早くから着手してノウハウを蓄積しようと積極的に推進する企業ほど、応募する新卒者や転職希望者を集めやすくなるのは必然です。さらに、少子高齢化によって、若い層の就職・転職希望者の確保は1つの命題と言えます。

例えば、出産を機に退職・休職中の優秀な人材にとって、子育てとの両立を行いやすい週休3日制の導入は、転職への大きなきっかけになり得るかもしれません。もし自社に制度がなく、ライバル企業が週休3日制を導入した場合、子育てのニーズが生じた社員がそちらに転職してしまうリスクすらあり得るでしょう。

そうした子育て世代を含め、ワークライフバランスを考えながらプライベートも充実させたいと願う層も考慮すれば、週休3日制の導入は、社員の属する企業へのロイヤルティーを高め、企業全体の離職率を下げるための施策として有効です。同時に、社員の仕事へのモチベーションも高め、業績への貢献という面でも大きな意味を持つことでしょう。

転職しやすい週休3日制を採用している企業・職種はエンジニア

週休3日制を採用し始めた企業を見ると、やはり従来の価値観に縛られにくいIT系の企業が多いことが目立ちます。IT業界においては、大手の上場企業こそが率先してこの流れを受け入れ、優秀な社員を確保しようとしている様子が見て取れます。そうした恵まれた環境の中で、エンジニアという職種は、最もその恩恵を受けやすい職種であると言えるでしょう。

パソコンを使っての業務が中心である限り、早くて安定したネットワークと堅固なセキュリティさえ確保できれば、ほぼ全ての業務を在宅で行うことも可能です。出社の手間も時間も節約でき、特に家庭内で子育てしている世代にとっては、仕事と両立させやすい労働条件であると言えます。

週5日勤務でオフィスへの出社が必須であるという条件のために勤務を継続できない優秀な社員を手放すよりは、企業へのロイヤルティを高めながら在宅ワークで業績への貢献をしてもらう方が、比べ物にならないほど有益でしょう。

エンジニア職においては、もはや出社を強要する理由すらないでしょう。ビデオ通話を介したミーティングも既に社会に浸透していますし、チャットツールなどのアプリやソフトウエアを駆使することで、離れた場所同士でタイムリーに連絡を取り合うことにも何の障害もありません。

むしろ成果を形にすることを求められるエンジニアにとっては、期間内で求められるタスクを仕上げさえすれば、どこで何日間働くかは問題ではありません。ただ長い時間を働けば評価されるのではなく、限られた時間の中で最大限のパフォーマンスを発揮することによって、週5日勤務が週4日勤務に変更されたとしても、給料は5分の4にはならない評価を受けられます。

そのためには、エンジニアとして数学やコンピューターサイエンスに精通しており、経験もスキルも豊富な人が求められるようになるでしょう。つまり、ハードのエンジニアでも、ソフトのエンジニアでも、個人として高いスキルセットが必要となるということです。

週5日勤務の正社員と同様に、就業時間は5分の4に減少しても同じパフォーマンスを提供することは、誰にもできることではないからです。ある意味で、成果に応じて対価を支払う制度に近い面もありますが、完全な成果報酬でもないところが雇用の安心感にもつながり、それぞれの良さを継承しているとも言えます。

週休3日制の企業への転職を考えているのであれば、エンジニアとしての経験が豊富であることはもちろんですが、個人の高いスキルと知識を持って即戦力であることをアピールできなければ、難しいとも言い換えられます。

ただ与えられたタスクを言われた通りにこなすだけではなく、コンピューターサイエンスの専門家としての見地と、その企業の経営戦略までを理解した上で、企業が計画している業績をクリアするために積極的にコミットしていくエンジニアが、そうではないエンジニアと待遇面と報酬面で大きな差がないという現実こそが、日本企業の問題点と言えるかもしれません。これからはまさにその点についてこそが、大きく変わっていくことになるでしょう。

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まとめ

これからの社会がよりIT技術によって進化を続けることが予想される限り、ハードでもソフトでも、エンジニアという職種が求められていく役割は大きくなる一方でしょう。その反面、企業にいいように使われてしまう労働環境と、エンジニアが誇りを持って正当な評価と報酬を得られながら働ける環境との差が、二極化していくことも予想されます。

さらに進行するであろう少子高齢化や、週休3日制などの柔軟な働き方への転換、従来とは異なるワークライフバランスの実現など、後者のエンジニアとして転職できるようになるための追い風は吹いています。あとは、エンジニアとして誰からも必要とされる知識と経験、スキルと経営者マインドを持っているかどうかを問われるという、過酷な競争を勝ち抜くためのアピールができるかどうかに掛かっています。